やっぱり…キスだけでは終われない

会社の最寄り駅から電車で3駅行ったところで、柾樹は私の手を引いた。

「ここで降りるよ」

「はい…。意外と近いところですけど、今日はどこで食事の予定なんですか?」

「今日は先に寄りたいところがあるんだけど、お腹空いてるなら食事を先にしようか?」

「いえ。食事は後で大丈夫ですよ」

駅の改札を出て5分ほど歩いた頃、ある建物の前で「ここなんだけど…」と言われ中に入っていく。そこはホテルのようだけど、マンションのようでもあって…。

「さぁ、入ろう」

「はい。でも…ここは?」

戸惑う私の背中に手をあてて、コンシェルジュらしき人に声をかける。

「こんばんは。須藤です。今日は吉田さんの紹介でこちらの部屋を見せていただくことになっているんですが、よろしいでしょうか」

「伺っております。どうぞ」と案内される。

ここは低層のマンションのようだった。案内された部屋は5階にあり、エレベーターを降りると、ドアは一つしかなくてワンフロアに一部屋というちょっと贅沢な感じがする。

「こちらの部屋になります。どうぞ。何かありましたら遠慮なくお声掛けください」と言い、コンシェルジュが下がっていっていった。
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