そのままの君が好きだよ
「もしかして、自分が悪いと思っていたの? 婚約破棄の原因はディアーナにあるなんて……」

「だっ……だって…………わたくしが悪いのです! ジャンルカ殿下が『聖女が誕生して安心した、わたくしと一緒に居ると疲れる』って仰っていて」


 言いながら、堰を切ったように涙が流れた。
 サムエレ殿下は、新しい聖女の誕生と、婚約破棄の経緯については知っていても、ジャンルカ殿下が真にわたくしとの婚約破棄を望んでいたことは知らなかったのだろう。その表情は困惑に満ちていて、なんだか申し訳ない気持ちになる。


「ディアーナといると疲れる? そんな、馬鹿な」

「……けれど、それが事実です。ジャンルカ殿下は、周囲からわたくしと比べられるのが辛いのだと仰っていました。心が安らがないと。わたくし、殿下がそんな風に思っていたなんてちっとも気づかなくて」


 本当はこんなことを打ち明けるなんて、とても情けない。実のところを言うと、わたくしはまだ、父や母にも婚約破棄の事実すら伝えられていなかった。恥ずかしかった。ダメな人間だと失望されたくなかった。
 それなのに、学園に来たら皆が婚約破棄の事実を知っている。それはあまりにも惨く、辛い現実だった。


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