そのままの君が好きだよ
「待てよ。僕は君の返事をまだ聞いていない。僕にはもう、君と婚約を結び直すしか、方法が無いんだ」


 そう言ってジャンルカ殿下はわたくしの肩を掴む。指が肌に食い込んで、鈍い痛みが走る。首を横に振ると、ジャンルカ殿下は笑顔を浮かべ、更にわたくしとの距離を詰めた。


「ねぇ知ってる? このままじゃ僕は父上に勘当されてしまうんだ。弟に……サムエレの奴に全てを奪われてしまう。こんな形で玉座を奪われるだなんて、そんなの納得できるはずがないだろう?
僕の方がアイツよりもすごい。僕の方が皆に認められるべきなんだ。なぁ、ディアーナもそう思うだろう? なぁ?
僕と婚約すると言え。僕の妃になると言うんだ!」


 ジャンルカ殿下の言葉に沸々と怒りが込み上げてくる。わたくしは意を決して、ジャンルカ殿下を真っ直ぐに睨みつけた。


「わたくしがあなたと婚約をすることはありません」

「――――――何?」


 ジャンルカ殿下はそう言って大きく目を見開く。心臓を抉るような声音。けれどわたくしは、もう迷わなかった。


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