そのままの君が好きだよ
「知っているかい? 僕はいつだって、弟や君と比べられてばかりだ。
『あの二人はあんなに優秀なのに。あの二人を見倣え』
――――そう言われ続ける僕の気持ちがディアーナに分かる? 本当に地獄みたいな日々だったよ。
君の側に居ると、僕は責められているような気持ちになるんだ。気持ちが少しも休まらない。辛いばかりだ。
けれど君は、そんな僕の気持ちに気づこうともせず、上ばかり見ている。もっと上に、もっともっと……ってね」
「そ……それは! 殿下の妃に相応しい女性になりたいと思ったからで……」
「そうだろうね。だけど、それが僕にとっては負担だった。このタイミングで聖女が誕生したのは実に幸運だったよ」
そう言って殿下はゆっくりと席を立つ。侍女たちが淹れてくれたお茶が冷めきって、波紋を描いていた。ティーカップに映った殿下の表情があまりにも冷たい。わたくしは絶望的な気持ちのまま、そっと顔を上げた。
「慰謝料は払おう。だけど、君は僕の妃にはなれない。――――もう二度と、僕の前に顔を出さないで欲しい」
そう言って殿下は部屋を後にした。残されたのはわたくし一人。涙で前が見えず、しばらくの間、わたくしはその場を微動だにすることが出来なかった。
『あの二人はあんなに優秀なのに。あの二人を見倣え』
――――そう言われ続ける僕の気持ちがディアーナに分かる? 本当に地獄みたいな日々だったよ。
君の側に居ると、僕は責められているような気持ちになるんだ。気持ちが少しも休まらない。辛いばかりだ。
けれど君は、そんな僕の気持ちに気づこうともせず、上ばかり見ている。もっと上に、もっともっと……ってね」
「そ……それは! 殿下の妃に相応しい女性になりたいと思ったからで……」
「そうだろうね。だけど、それが僕にとっては負担だった。このタイミングで聖女が誕生したのは実に幸運だったよ」
そう言って殿下はゆっくりと席を立つ。侍女たちが淹れてくれたお茶が冷めきって、波紋を描いていた。ティーカップに映った殿下の表情があまりにも冷たい。わたくしは絶望的な気持ちのまま、そっと顔を上げた。
「慰謝料は払おう。だけど、君は僕の妃にはなれない。――――もう二度と、僕の前に顔を出さないで欲しい」
そう言って殿下は部屋を後にした。残されたのはわたくし一人。涙で前が見えず、しばらくの間、わたくしはその場を微動だにすることが出来なかった。