色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ

「私、働きたいんです」

 ジャックさんに会って相談したいことがあると簡潔に手紙を書いて。
 バニラがその手紙を郵便局へ持って行って速達で出した。
 この国の郵便局事情を知らないので、すぐには届かないだろうと思っていたけれど。
 翌日の、13時を過ぎた頃、騎士団からの迎えが来た。
「セシル様、ジャック様の部下という方がお迎えに来ています」
「マジで!?」
 私は大急ぎで身支度をして、家の前で待ちぼうけしているジャックさんの部下という人に頭を下げた。
「ごめんなさい、お待たせしました」
 馬車で迎えに来た騎士団の男は、20代半ばくらいの見るからに優しそうな人だった。
「私がジャック様のもとまで安全にお連れ致しますんで」
「よろしくお願いします」
 騎士団だけど、ひょろっとした華奢な男の人。
 馬車に乗って、連れて行ってもらう。

 城に入るのは二度目だというのに、ガッチガチに緊張する。
 馬車を降りて、部屋に案内されるまで緊張で心臓がバクバクした。
 応接間のソファーで座って待っていると。
 ドアがノックされて、見るとジャックさんが入って来た。
「すいません、お待たせして。会議をなかなか抜け出せなくて」
 色気だだ漏れで、全ての女性を落とす自信がある。
 そんな完璧な顔を見つめながら、何でこの人騎士団やってるんだろうと考えてしまう。

「お久しぶりですね。で、僕に用とは?」
「ごめんなさい、お忙しいところ。あ、あのですね…」
「はい」
「私、働きたいんです」
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