色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ
 自分で言っておいて。
 何か、大胆なことを言ってしまったなあと後悔する。
 ま、でも相手は太陽様だし。
 襲われたら襲われたで仕方ない。

 どこか、投げやりに、ベッドに潜り込むと。
 暫くして、太陽様がベッドにやってきて隣に横になる。
 薄暗いから、自分がどんな表情をしているのかバレないで済む。
「セシナさんだっけ?」
 静まり返った空間に、太陽様の声が響く。
 一瞬、誰だよと思って頭をフル回転させて。
「いえ、私の名前はセシルです」
 と否定する。
 ふかふかのベッドと、枕は心地よくて。
 目を閉じたらすぐにでも夢の世界へと連れて行かれそうだった。
「セシールさん?」
「……呼び名はマヒルなので、マヒルとお呼びください」
 太陽様は覚える気がないのか、また名前を間違える。
「すんません。俺、あんまり人の名前覚えるの苦手なんで」
「…大丈夫です。そんな感じしてましたから。私に興味がないのもわかってます」
 あえて、キツく言ってしまう。
 まあ、でも太陽様が私に全く興味がないのはわかっている。
 今日と言う日まで、私の名前さえ覚えていなかったのだから。
「マヒルさんの好きな人って、国王なんすか?」
「は?」
 太陽様の一言に、思わず太陽様の顔を見る。
「だって、国王と仲が良いから」
「それは、勘違いです。私の好きな人は自分の国にいて…アレですから」
 アレって何だよ…。
 だけど、上手く説明が出来ない。
「そうっすか」
 随分と言葉を濁したにも関わらず、太陽様は納得している。
 この人、本当に馬鹿正直というか、人を疑うことを知らない人なのかもしれない。
「太陽様こそ、私の伯母が好きなんでしょ?」
「……」
 太陽様が黙り込む。
 一気に空気が重たくなる感じがした。
「あ、あの…太陽様」
「俺が好きになった人は、皆不幸になります」
 低い声で太陽様が呟いた。
「え?」と返事をする間もなく、太陽様から寝息が聞こえてくる。
 よっぽど疲れているようだ。
 こっそりと起き上がって、太陽様を見ると。
 こっちに背を向けて眠っている。

 太陽様が悪いわけじゃなくて、太陽様の妹が悪いんじゃないですか…
 そんなことを言ったら、驚くんだろうか。
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