色褪せて、着色して。～悪役令嬢、再生物語～Ⅲ

　私は今、カレン様の子供たちにピアノを教えていることを伝えた。
　ついでに、話の流れで大人たちが勝手に太陽様と結婚させた…とふにゃふにゃと、ぼやかしながら説明をする。
　カスミさんは「ほぉー」と頷いて話を聴いてくれる。
「カレン様がよくマヒル様のような方を許しましたね…」
　ぼそっと、カスミさんの呟いた言葉に、むむっとバニラが睨みつける。
「どういう意味でしょうか？」
　バニラにとっては、悪口に聞こえたらしい。
「いえ…、王族のほうではそもそも若い女性を立ち入ることを嫌がっていましたし。何よりその・・・ごめんなさい。言葉が出てこなくて…」
「いえ、大丈夫です。得体の知れない海外の人間なんて嫌ですもんね」
「違います、違います。そうじゃなくて、ごめんなさい。上手く言えなくて」
　慌てて否定するカスミさんを見ていて、なんだか気の毒になってきた。
　色々と話したいことはある。
　ただ、王家の事情を話すわけにはいかない。
　彼女なりの葛藤があるんだろう。

　バニラは怖い顔をしていたが、カスミさんの慌てようを見て察したらしい。
「カスミ様は毎日、農作業をされているんですか？」
　急に話題を変えた。