色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ
 1時間ぐらい…の感覚だったけど。
 女子会というのは恐ろしい。
 3時間以上喋っていたのには、ビックリした。
 もう、夜まで喋り倒していくんではないかと思うくらい話が盛り上がった。
 カスミさんは色んなことを教えてくれた。
 ゴシップネタに餓えていた私には有難い存在だ。

 カスミさんは、貴族出身だけれど、伯爵の正妻の子ではなかった(愛人の子?)
 生まれてすぐに施設に預けられて、それから農家の夫婦の養子になって。農家の子供として育っていたところ。伯爵が、私利私欲のためにカスミさんを引き取りにきたそうだ。
 昼ドラマみたいな展開に唖然としていたけれど、カスミさんは無理矢理。侯爵家になんと二回も嫁がされて、二回目の夫にDV被害を受け死にかけていたところを実のお兄さんに助けてもらい。この王家の領地にやって来た。
 あまりにも酷い内容に私とバニラは絶句した。でも、カスミさんは気にしていないらしい。
「昔は病んだ時期もあったけど、今は幸せだから大丈夫」
 カスミさんは結婚して、幸せだというのが見てわかる。

 この領地での出来事や、国家騎士団の人間が愛想が悪いなど喋っているうちに。
 赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。
「カスミ、限界だ」
 見ると、赤ん坊を抱きかかえた強面の騎士団の男が立っている。
 年は30代後半だろうか?
 鋭い目つきだけれど、整った顔付きをしてイケメンだと思った。
 男は、カスミさんに赤ちゃんを渡すと、やれやれとため息をついた。
 そして、ゆっくりとこっちを見る。
 目が合った…と思った。
 男は、驚いた顔で私を眺める。
 カスミさんが眺めている以上に、じっとこっちを見つめてくる。
「はあっ!?」

 男は絶叫したかと思うと、ずんずんとどこかへ行ってしまう。
 あっけにとられていると。
 木の陰に隠れていた男の子たち(まだいたのか…)のほうへ向かっていく。

「おい、見世物じゃねえんだからな。散れっ!」

 男が怒ると、男の子たちは「わー」と叫んで屋敷の方へと吸い込まれていく。
 なんなのだろう、この人。
 カスミさんを見ると、カスミさんは赤ちゃんをあやすのに必死で男には無関心。
 どすどすどすっと、男が大股でこっちにやってくる。

「あのっ。俺、帰りは送っていきます!」
< 33 / 93 >

この作品をシェア

pagetop