色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ
 ルピナスが泣き止むと、ルピナスはメグミ様と遊び始めた。
 私とローズ様は2人が遊んでいる姿をじっと眺めている。
「さっき、あいつのこと綺麗だと言ったな」
「えっ。ああ、ハイ」
 ローズ様もサングラスを外して、私をじっと見た。
 視線が痛い。
「あの目を見てどう思う?」
「へっ?」
 ルピナスはメグミ様と駆けっこをしている。
 声は出していないけど、楽しそうだ。

「ルピナス様はオッドアイなのですね。凄く綺麗な瞳ですね」
「オッドアイ…イバラ姫の国ではそう言うのか」
 ローズ様は睨みつけるように私を見つめる。
 何かまずいことを言ってしまったのだろうか。
「この国では、あいつの目は不吉だそうだ」
「不吉!? なんでです? あんなに綺麗なのに」
「俺に言われてもわからない。ただ、あの目を持った上にルピナスは王位継承者だからな。抱えているものはデカすぎるんだ」
 王位継承者…という言葉にずしんと身体が重たくなる。
「イバラ姫の国では男女構わず王位を継げるのであろう? この国は男しか継げない」
 ローズ様は目を細める。
 視線の先には、サングラスをかけた男と、サングラスをかけた男の子がいる。
「俺に子供がいれば、ルピナスへの負担も少なかったのかもしれないのにな」
 ローズ様の言葉を聞いてルピナスを目で追う。
「結婚されないのですか?」
「…国王の結婚ってのは厄介なんだよ」
 すねるように言われたので、思わず笑ってしまう。
 …確かに、厄介に違いない。

 ローズ様と話していると。
 穏やかだった風が、
 ぶわっと強風になって「きゃあ」と声をあげてしまう。
 いたずらするように風が髪の毛をぐっちゃぐちゃにする。
 強風で目が開かないと思うと、ぐいっと腕をひっぱられた。
 目を開けると、ローズ様の腕の中にいる。
「えっ!?」
 がっちりとローズ様に抱きしめられていた。

 どういうことだろうと、固まってしまう。
 ローズ様から香る甘い匂いと、体温と…。
 何で・・・
「あ、あのローズ様?」
 話しかけても、ローズ様は放してくれない。

 ざわざわとした人混みが近づいてくるのは時間の問題だった。
 此処は、国家騎士団の敷地内。
 十数人ほどの騎士たちが歩いてこっちにやってくるのが見える。
 騎士たちの中に、見覚えのある顔を見た瞬間。
 これは、ヤバいと頭で警告がなった。
 騎士たちは、こっちを見て何事かと眺めている。
 太陽様は驚いて大きな目を更に見開いてこっちを見ている。

「やめてくださいっ!」

 とっさに、私はローズ様を突き飛ばして太陽様のもとへと駆け寄ったのだった。
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