色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ
 カレン様の発言に、「はい?」と言うよりも早く、
「おまえ、何言ってんだ?」
 と鋭く突っ込んだのは蘭様だ。
「子供たちに教えるピアニストを探すにしても、すぐには見つからないでしょう? それに、私が弾けたら子供たちに教えられるし効率がいいじゃない」
 …何を言っているんだ、この人。

 自分の顔を見ることは出来ないけど。
 多分、私は相当冷ややかな目で見ていたのだと思う。
 出会った頃から感じていたけど。
 私は、カレン様のことが苦手…だ。
 住む世界が違うっていうのは重々承知しているけど。
 何で、この人。話の流れでそんなこと言うんだろう。
「申し訳ありませんが、お断りいたします」
 頭を下げて断る。
「何故?」
 カレン様は首を傾げる。
 頭をあげると、蘭様が物凄い形相でカレン様を見ていた。
 カレン様は何も知らない子供のような…あまりにも無邪気な表情を浮かべている。
「カレン、いい加減にしろ」
 蘭様が低い声で叱る。
 蘭様から湧き出る怒りのオーラをひしひしと感じて、気分が悪くなる。
 何だろう、この夫婦。

「マヒルさんに非はないのに、どうして?」
「……」
 そういうもんなんですよ、世間というのは。
 口に出したかったけど、言うのも馬鹿らしいと思ったので黙る。
 この場の空気をぶち壊すようにカレン様は喋る。
「だって、貴女は国王に無理矢理抱きしめられただけなのでしょう?」
「……」
 カレン様が近づいたかと思うと。
 彼女は私の肩にそっと手を添えた。

「貴女は被害者なのですから」
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