色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ
 脳内で、やかんが「ぴぃー」って音が出ている。
 もしくは、寸胴鍋にぐつぐつとお湯が沸騰している。

 何で、こうなった?
 怒りを通り越して呆れ返ってしまう。
 何度も丁重にお断りしているのに。
 カレン様は諦めない。
 それどころか、「さ、いきましょう」と言ってバニラに言った。
「はじめまして、国王の弟、蘭の妻でカレンっていいます」
 いきなりバニラに自己紹介を始めるカレン様。
 ほんとマイペースで自由人だ。
「はじめまして、マヒル様の侍女でバニラといいます。よろしいんですか? 戻らなくて」
「いいのいいの、戻ってもあの人が待ち伏せしてそうで逆に危険だし」
「主人を前にして大変失礼極まりなく言いにくい事になりますが、マヒル様の寝泊まりする家というのは一般的な家庭の家となっております…ベッドも柔らかいわけではありませんし」
 ちらりとバニラは遠慮するように言う。
 別に家が一般家庭だって言われても気にすることはない。
「大丈夫よ! 行きましょう」
 と言って嬉しそうにカレン様は歩き出した。
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