色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ
馬車乗り場に着くと、何事もなかったかのようにメグミ様が御者席で座って待っていた。
カレン様がメグミ様を見て「あら? うちのルピナスと同じね」と言ってメグミ様のサングラスを見てふふっと笑い出す。
そういえば、メグミ様はローズ様の右腕だから、カレン様は脅えたり文句言ったりするのかと思いきや表情変えずに馬車に乗り込んでいた。
あら? と肩透かしをくらったけど、ローズ様の直近で仕えている部下なんて沢山いるからカレン様が知らないのもアリなのかもなと思った。
家に辿り着くと、バニラはメグミ様にコソコソと耳打ちをした。
「さあ、カレン様。こちらです」
と言って、バニラは玄関の扉を開ける。
リビングルームで待っている間、バニラは大急ぎで客室の片付けと準備をして。
それから、キッチンで何かを作っている。
「マヒルさんは、こちらで旦那様と暮らしているの?」
薄暗い部屋をきょろきょろしながらカレン様が言う。
私は「どうぞ」と言ってソファーに誘導した。
「いえ、夫は騎士としての仕事が忙しいので、ほとんど帰ってきません」
「あら、そうか…そうよね。騎士団の仕事は忙しいでしょうね」
カレン様が哀しそうな顔をするので、何でだろうと思った。
「お待たせしました」
バニラはトレイにマグカップを2つとお皿に何かを乗せて持ってきた。
「カレン様、苦手なものや食べられないものはありますか?」
「いいえ、好き嫌いはないから大丈夫よ」
バニラはローテーブルにカップと皿を置く。
皿には、バニラお手製のドライフルーツが置いてあった。
「ホットミルクです。温まりますよ。こっちはドライフルーツです」
「まあ・・・ありがとう! 突然訪ねたのに、こんなによくしてもらって」
カレン様は嬉しそうに言ったが。
ぴたっと何かを思い出したように固まった。
バニラはふふっと笑う。
「無理して食べられなくても大丈夫です。毒は入っていませんが、気になるならおやめください」
毒…という言葉に、ぞっとしたと同時に。
バニラが毒なんて入れるわけないでしょうが!! という怒りがこみあげてくる。
私はカップを手に取ると、ふうふうと冷ましながらホットミルクを飲んだ。
カレン様は黙っていたが、思いきったようにカップを手に取る。
「ごめんなさいね、失礼な態度をとって。王族に染まってしまった自分がイヤ」
「大丈夫ですよ。わたくしが祖国で仕えているときも、食事に関しては厳しいものでしたから」
カレン様は一口飲むと「おいしい」と呟いた。
バニラは大人な対応しているけど。
私は、カレン様が喋れば喋るほど腹が立っているのに気づいた。
カレン様が王族じゃなければ、「おかえりください」と強く言えるのに。
暫くの間、沈黙が続いた。
私にとってこの沈黙は苦痛ではなかったけど、沈黙を破ったのはカレン様だ。
「マヒルさんは、いちいち…しつこく質問しないのね」
「へ?」
「あのテンマ騎士と何故、あんなところで言い争っていたのか…とか、夜中に何であんなところにいたのとか」
「…それは」
別に関わりたくないからデスケド。
半分白目になってしまうが、薄暗いのでわからないだろう。
「僭越ながら…カレン様。我がスカジオン国では、身分の高い者にあれこれ質問することや、話しかけることは憚れる行為なのです」
バニラがきっちりと説明する。
カレン様は「え、そうなの!?」と大きな声を出した。
「そうだったの…。知らなかったわ」
カレン様を見ていると、常識が通用しないんだな…という気がしてきた。
だけど、私が常識と思っていることはこの国では、通用しないのかもしれない。
「蘭が忙しさのあまり周りが見えなくなっている…でも、人材は絶対に選ぶべきよ」
独り言かのように、カレン様がぶつぶつ呟いた。
カレン様がメグミ様を見て「あら? うちのルピナスと同じね」と言ってメグミ様のサングラスを見てふふっと笑い出す。
そういえば、メグミ様はローズ様の右腕だから、カレン様は脅えたり文句言ったりするのかと思いきや表情変えずに馬車に乗り込んでいた。
あら? と肩透かしをくらったけど、ローズ様の直近で仕えている部下なんて沢山いるからカレン様が知らないのもアリなのかもなと思った。
家に辿り着くと、バニラはメグミ様にコソコソと耳打ちをした。
「さあ、カレン様。こちらです」
と言って、バニラは玄関の扉を開ける。
リビングルームで待っている間、バニラは大急ぎで客室の片付けと準備をして。
それから、キッチンで何かを作っている。
「マヒルさんは、こちらで旦那様と暮らしているの?」
薄暗い部屋をきょろきょろしながらカレン様が言う。
私は「どうぞ」と言ってソファーに誘導した。
「いえ、夫は騎士としての仕事が忙しいので、ほとんど帰ってきません」
「あら、そうか…そうよね。騎士団の仕事は忙しいでしょうね」
カレン様が哀しそうな顔をするので、何でだろうと思った。
「お待たせしました」
バニラはトレイにマグカップを2つとお皿に何かを乗せて持ってきた。
「カレン様、苦手なものや食べられないものはありますか?」
「いいえ、好き嫌いはないから大丈夫よ」
バニラはローテーブルにカップと皿を置く。
皿には、バニラお手製のドライフルーツが置いてあった。
「ホットミルクです。温まりますよ。こっちはドライフルーツです」
「まあ・・・ありがとう! 突然訪ねたのに、こんなによくしてもらって」
カレン様は嬉しそうに言ったが。
ぴたっと何かを思い出したように固まった。
バニラはふふっと笑う。
「無理して食べられなくても大丈夫です。毒は入っていませんが、気になるならおやめください」
毒…という言葉に、ぞっとしたと同時に。
バニラが毒なんて入れるわけないでしょうが!! という怒りがこみあげてくる。
私はカップを手に取ると、ふうふうと冷ましながらホットミルクを飲んだ。
カレン様は黙っていたが、思いきったようにカップを手に取る。
「ごめんなさいね、失礼な態度をとって。王族に染まってしまった自分がイヤ」
「大丈夫ですよ。わたくしが祖国で仕えているときも、食事に関しては厳しいものでしたから」
カレン様は一口飲むと「おいしい」と呟いた。
バニラは大人な対応しているけど。
私は、カレン様が喋れば喋るほど腹が立っているのに気づいた。
カレン様が王族じゃなければ、「おかえりください」と強く言えるのに。
暫くの間、沈黙が続いた。
私にとってこの沈黙は苦痛ではなかったけど、沈黙を破ったのはカレン様だ。
「マヒルさんは、いちいち…しつこく質問しないのね」
「へ?」
「あのテンマ騎士と何故、あんなところで言い争っていたのか…とか、夜中に何であんなところにいたのとか」
「…それは」
別に関わりたくないからデスケド。
半分白目になってしまうが、薄暗いのでわからないだろう。
「僭越ながら…カレン様。我がスカジオン国では、身分の高い者にあれこれ質問することや、話しかけることは憚れる行為なのです」
バニラがきっちりと説明する。
カレン様は「え、そうなの!?」と大きな声を出した。
「そうだったの…。知らなかったわ」
カレン様を見ていると、常識が通用しないんだな…という気がしてきた。
だけど、私が常識と思っていることはこの国では、通用しないのかもしれない。
「蘭が忙しさのあまり周りが見えなくなっている…でも、人材は絶対に選ぶべきよ」
独り言かのように、カレン様がぶつぶつ呟いた。