色褪せて、着色して。～悪役令嬢、再生物語～Ⅲ

　結婚した体(てい)でいこう…と言い出したのは太陽様だ。
　妹を守るため、自分を犠牲にして私を妻として迎えてくれた。
　一緒に暮らすといっても、寝室は別だし、私が嫌がることを絶対にしない。
　私を見ているのではなく、かつてのエアー夫人と重ねているんだろうなというのが顔を見ていてすぐにわかる。滅茶苦茶、フクザツだけど。

　私がエアーという40代のオバサンとして生きていたのは一年も満たなかったけど。
　あの時の太陽様の印象はとにかく空気の読めない人…だった。
　あんまり、良いとは思えなかった。
　多分、妹のイチゴと、兄のナイトの存在が大きすぎたからだ。
　兄と妹が側(そば)にいない今、単体だけで見た太陽様は、人間として凄く良い人だと思う。
　本人には悪いけど、兄妹が毒だったんだろうな。
　もともと、低姿勢で周りから愛されるキャラクターだとはわかっていたけど。
　太陽様を見ていると、不覚にも素敵な人だなあと思う。
　エアーのときはオバサンだったから何の感情も湧かなかったのかなあ。


　カイくんをはじめ、ナズナくん、セリくん、キキョウくんは太陽様を見て眉毛を吊り上げて警戒心丸出しだった。
　ナズナくんは、こっそりと「随分と若いんですね」と言ってきた。
　どうやら子供たちの中で私の旦那さんと言うのは、40代で髭が生えていて偉そうにしているオッサンだったようだ。
　子供たちに対しても太陽様は敬語で低姿勢に「妻がお世話になりまして」と挨拶したもんだから、みんな驚く…よりもドン引きしていた。

　太陽様と暮らし始めて１週間も経たないうちに子供たちは太陽様に心を開いた。
　子供たちがお休みの日に野球やサッカー。追いかけっこなど、太陽様は楽しそうに子供たちと遊んでいた。
　カイくん達が笑顔ではしゃいでいる姿を見たことがなかったので驚いた。
　彼らの心を一瞬で虜にしてしまう、太陽様は凄い。