色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ
 1ヵ月は思った以上にあっという間だった。
 私は、太陽様と一緒に朝食を食べて。
 サンゴさんの家に行ってピアノの練習をして。
 またお昼ごろに戻って、太陽様と食べたりカイくんたちと昼食を食べたりして。
 またピアノの練習をして。
 夕食は太陽様と一緒に食べて…を繰り返すだけの毎日だった。
 
 太陽様はアクティブに、早朝から筋トレして。
 村で困っている人がいればすぐさま駆け付けてお手伝いをしたり、
 カスミ様と一緒に農作業をしてみたり。
 子供たちと遊んだり…。
 常に動いている。すっごくアクティブ。

 正直、楽しかった。
 まともに会話してこなかったから気づかなかったけど。
 太陽様と一緒に過ごした1ヵ月は凄く充実していた。
 太陽様の休暇が終わったら、自分はきっと落ち込むんじゃないかって思った。
 楽しいことがあったあとの喪失感を得るのが怖かった。


 どんどんっというノックに。
 扉を開けると、目の前に壁が現れたときは、久しぶりすぎて「うわっ」と飛び跳ねてしまった。
 久しぶりに見ると、また身長伸びましたか? と突っ込みたくなる。
「蘭殿下がお呼びです」
 サングラスからは読み取れない表情に、「ん?」と首を傾げる。
「え、ローズ様じゃなくて蘭様ですか?」
 メグミさんはローズ様の部下だ。
 なんで、蘭様なのか…。

 玄関前で固まっていると、バタバタと足音が近づいてきた。
「俺も行きます」
「わたくしも、マヒル様を守りますわ!」
 振り返ると、敵を倒しに行く気満々…というような表情を浮かべた太陽様とバニラが立っていた。
 2人とも、相手は王弟だよ!!
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