色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ
 王様が暮らす宮殿まで何度も門を通り過ぎて、
 護衛の人達にじろりと見られて。
 宮殿にやっと辿り着いたときには、くたびれていた。
「でっかあ…」
 目の前にそびえたつ宮殿を見上げていると、「こっちだ」とローズ様が案内してくれる。

 ついてこい…と言われるがまま。
 ローズ様を見失わないように小走りでついて行く。
 一面、絵画が飾られた通路に辿り着くと。
 ローズ様は一つの絵の前で立ち止まった。
 …そこに飾られた絵画に答えはあった。
「俺の母親。20代で亡くなった」
 一人の女性が椅子に座ってこちらを見て微笑んでいる。
 金色の長い髪に、頭にはティアラを乗せ。
 青い目はローズ様と同じで。
 …私にそっくりだった。

 ここまで似ているとは。
 ぞっと悪寒を感じる。
 誰も居ない、人の気配のしない空間の中で。
 目の前で微笑む女性は自分にしか見えない。

 初めてローズ様に会ったとき、ローズ様は私を見て酷く驚いていた。
 他の人達もビックリしていた。
 私はずっと、自分が外国人だから驚かれているんだろうと思った。
 …違ったわけだ。
 私自身は、あんまり意識していなかったけど。
 周りから見ると、私とローズ様は似ているらしい。
「考えてみれば、母親とイバラは身内だから似ていても可笑(おか)しくはないんだよな」
「・・・ソウデスネ」
 身内…身内か? 本当は赤の他人だけど。
 アハハと笑ってみせると。
 ローズ様は懐かしむように絵画をじっと見ている。
「ローズ様はもう一つ、私に隠し事をされてますよね」
「俺が答えるとでも?」
 意地悪そうにローズ様が言った。
 私を抱きしめたのは、私を変な男どもから守るためなんかじゃなかった。
 懐かしさからのハグであって。
 そして・・・
「心に決めた方がおられるのですね」
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