Restart〜二度目の恋もきみと

「あの後、戻ってきた専務は取引先に頭を下げてとても大変だったんですから。
もしかしたら、商談の話もなくなるかも．．．」

松谷さんはそこまで言って
「そんな．．．」
と血相を変えた私をチラリと確認すると
小さくほくそ笑みながら口を開く。

「あなたは離婚したのにまだ専務を振り回すんですか？
専務は優しいからあなたに同情をしているだけなのに。
あまり勘違いして彼を困らせないでほしいんですけど。」

松谷さんの“彼”という呼び方が、
二人の親密ぶりを
漂わせているようで私の胸にチクリと痛みが走った。


もしかして、竜海さんは同情から
私を放っておけないのだろうか．．．

でも、竜海さんは愛してるって言ってくれたし、
松谷さんとは何でもないと言っていた。

「彼が本当は誰と一緒にいたいのか考えたら
黙って身を引くのも優しさだと思うわ」

松谷さんは意味ありげな言葉をささやくと
フッと私に微笑みかける。

もう何が本当なのかわからなくなる..

私は胸を押さえながら一歩後退りした。

そして「すみません。失礼します」と
松谷さんに向かって頭を下げると
逃げるようにその場を後にした。