Restart〜二度目の恋もきみと
「桜良さん大丈夫ですか?」


応接室から出てきた私の顔が
青褪めているのに気づいた結弦くんが
心配そうに声をかける。


「大丈夫です。ちょっとお手洗いに行ってきます」

私は口元を手で押さえながら
慌てて事務所を出た。

あの男と同じ空間にいると思うだけで
吐き気がする。

仁坂は中学時代そこそこ顔が良くて
スポーツも出来たから、
クラスの中心人物だった。

それでいてずる賢くて
先輩には愛想よくて
後輩やクラスでも気の弱いものには
横柄な態度を取るような男だった。

ある時、クラスで気の弱い男の子を
仁坂達、数人の生徒が体育館裏で虐めていたのを見かけてしまったのだ。

私は恐かったけど見逃すことができずに
注意したのだ。

その日からターゲットはその男の子から
私へと変更されたのだ。

あの辛かった日々を
私は思い出さないように
今まで生きてきたというのに...。

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