Restart〜二度目の恋もきみと
仁坂と会ったことで
あの頃の嫌な記憶を
フラッシュバックのように
思い出してしまって手の震えが止まらない。

だけど、あまり長く事務所を
開けているとまた結弦君達に
心配を掛けてしまう。

それにもうあの頃の私ではない。

皆のお陰で少しだけど自信もついたし
あんな男にもう振り回されたくない。

私はフウッと大きく息を吐くと
事務所へと戻った。

そして自分の席に腰を下ろすと
向かいの席の結弦くんが
「桜良さん、大丈夫ですか?」
と再び問い掛けた。

「はい。ありがとうございます。
少し気分が悪くなっただけで大丈夫です。」

私は心配かけないよう気丈に振る舞う。

「桜良ちゃん、体調悪かったら
無理しなくてもいいのよ?」

佐野さんもそれを聞いて話しに割って入ってきた。

「大丈夫です!
今朝、朝ご飯食べ過ぎちゃいました。」

私はアハハッと笑って誤魔化した。

「そう。それならいいんだけどね」

皆、優しいな..

私はじ〜んと胸があつくなった。

あの頃の学校という狭い世界で 
生きていた私は
学校が全てで人ってこんなにも
恐いものなのかと人間不信になっていた。

だけど、今は色々な人と出会って
仁坂のような人間ばかりではないことを
知ることができた。

もう、あんな奴に振り回されたりしない。

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