ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

「えっ、どうして私が欲しい髪飾りがわかったの?」
「っ、…………」

 アルベールから、返答はなかった。
 けれど、なぜか私の瞳を真っすぐに見つめる、髪留めのビジューと同じ色をした瞳は、いつもよりも温かさをたたえているように私には思えた。

 なぜだろう。今日は、アルベールが異常にかわいく見えるのは。
 みなさーん! 私の騎士が、かわいすぎますよ!

「アルベール。うれしい! 素敵な髪留め、ありがとうございます」

 その瞬間、なぜかアルベールは大きく目を見開いた。
 その瞳を縁どる淡い金色のまつ毛が、思ったよりも長いことに私が気がついた瞬間、その瞳はいつも以上に氷点下になったような気がした。

「あの、アルベール?」
「…………は?」

 あ、やっぱり嫌われているらしい。
 冷たい瞳に、射すくめられてしまったかのように、私の心臓は時を止めたのだった。
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