ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?
『は』しか言わない騎士になったわけ(sideアルベール)
***
アルベールは、リヒター子爵家の三男として生を受けた。
年の離れた兄二人が、騎士になったこともあり、アルベールも当然のように騎士を目指し、持ち前の剣の才能も手伝って、あっという間に出世階段を駆け上った。
王都で、同年代の騎士達で彼に敵う人間はいなかった。
けれど、アルベールには秘密がある。
家族とは一人だけ違う、淡い金の髪と青い瞳。
ほかの家族が、黒い髪と瞳をしているのに、一人だけ違う色合いのアルベールは、いわゆる先祖返りだ。
子爵家でありながら、長い歴史を持つアルベール家には、言い伝えがあった。
それは、北極星の魔女の血を引いているということ。
それゆえに、とても魔力が強く、代々騎士として王国の剣と呼ばれていること。
しかし、北極星の魔女がもたらしたのは、恩恵だけではなかった。
そして、アルベールはその恩恵を誰よりも受けて、強い魔力と剣の腕を持っている代わりに、魔女の執着をその身に受ける宿命を宿していた。
ここ何十年も、その執着に該当する容姿の子どもが生まれることなく、束の間の平和を享受していたリヒター子爵家。しかし、アルベールが生まれて、その色を見た母親は泣き崩れ、父は蒼白になり壁に手をついて項垂れたという。
「だが、特に問題ないな」
アルベールは、一人剣を振るいながらつぶやいた。