ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

 ***

 アルベールは、道端に倒れていた。
 行き倒れにしては、妙に身なりのいい青年。
 そして、おそらく剣を扱うのだろう、鍛えられた体躯。
 そして、淡い金髪が陽光にキラキラと輝いていて、私は素直に綺麗だな、と思った。

 その時、アルベールの視線が、真っ直ぐ私に向けられた。

「っ……!」

 その青い瞳は、鋭かったけれど、あまりに綺麗で見惚れてしまった。
 なぜか、アルベールも私から視線を外すことなく、しばらくの間、私たち二人は見つめ合っていた。

「あ、あの」
「……このご恩は、いつかお返しします」

 なぜか、赤い顔をしたアルベールが、私から目を逸らした。
 おそらく、暑い日光に当てられてしまったに違いない。
 もう大丈夫だと、言って聞かないアルベールに、私は、持っていた水筒を押し付けて、日陰に座らせ、立ち去った。

 それだけのことだ。

 次に会った時、アルベールは、表情を変えることもなく、「リヒター子爵家三男、アルベールと申します。以後お見知り置きを」と、初対面の挨拶をしてきたから、確実に私の顔など見てもいなかったのだろう。

 メキメキと頭角を表したアルベール。
 執事のセイグルも認めていたから、腕はかなり立つようだ。

「アルベール、よろしくお願いします」
「は、身命を賭してお仕えいたします」

 それが、再会初日の会話だった。
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