ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

 触れたくて、声をかけて、許されるなら、この腕の中に彼女を閉じ込めてしまいたい。
 それは、きっとアルベールが魔女の子孫だからに違いない。
 魔女の血を、確かに受け継いでいるのだ。アルベールは……。

「王都に」

 アルベールは、覚悟を決めていた。
 いったんは辞めた王立騎士団。
 だが、アルベールには王太子という、強力な伝手がある。
 
 そして、側妃の子でありながら王太子となったかつての学友は、その治世を磐石なものにするために、英雄という存在をその手中にすることを強く望んでいた。

「それならば、魔女を倒し、英雄となる」

 アルベールの剣は、師となったかつての辺境伯騎士団長セイグルの指導を受けて、以前とは比較にならないほど切れ味を増している。

 王太子から送られてきた手紙には、騎士団主催の剣術大会の招待状が入っている。
 そして、高価な転移魔法陣も同封されていた。

「奮発したな……」

 それだけ、王太子の期待は高いということだ。喜んで駒になろうとアルベールは口の端を歪める。

 大会に参加し、剣の腕を証明すれば、王立騎士団である程度の位置で復帰を果たせるだろう。
 すでに、王立騎士団では、北極星の魔女討伐のための編成が行われている。

(なんとしても、圧倒的な力を示して優勝し、選抜隊の指揮権を手に入れる)

 アルベールは、転移魔法陣を発動した。
 必ず、ミラベルを救って見せると、心に決めて。
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