遠き記憶を染める色
⑭あの時と同じ場所で、同じ気持ちで…
あの時と同じ場所で、同じ気持ちで…
その時…。
大岬のバスターミナルは、時間が止まった…。
「みんな、サダト兄ちゃんの味方だよ。みんな、待ってたんだよ。お兄ちゃんが帰って来るのを…」
「…」
サダトの胸の中で、流子は呟くようだった。
彼は流子の肩に回していた両手にギュッと力を入れ、それに無言で応えた。
そして、二人は流子の同級生たちの拍手の中にしばし身を置いた…。
***
「…さあ、最後の5人、急げ」
「ハイ‼」
「じゃあ、これで最後ですので自分も一緒で、すいません…」
引率の先生は最後のグループに混じり、”アイドル”甲田サダトとのスマホショットは円滑に終った。
「よし…、これで解散だ。皆、お疲れ様!」
皆は一様に満足そうな笑顔でバスターミナルから去って行った。
「先生、助かりました。ありがとうございます」
「いや…。とにかく間に合って良かった。じゃあ、また部活でな…」
○○教諭も早速スマホに目をやり、先程の撮影者からの画像受信をチェックするのだった。
***
「…なら、私たちも行こうか、B美」
「そうだね。…サダトさん、これからも流子をお願します。私たちも”応援”してますから。いろいろと…」
サダトは流子と顔を見合わせて、クスッと笑いをこぼしていた…。
この後A子とB美は、迎えに来ていた家族の車に乗ってバスターミナルを後にした。
「ごめんね、全員の写真とりに付き合ってもらっちゃって…」
「ははは…、先生が仕切ってくれたんでさ。いつもに比べりゃ、ぜんぜんだったよ。さあ、車乗ってよ」
流子は笑顔で会釈し、助手席に乗り込んだ。
「疲れてるところ悪いけど、このまま磯の海岸寄っていいかい?海見ながら話したいんだ」
「うん!海を前にして波音聞きながらお兄ちゃんと一緒に居れば、疲れなんてとれちゃうよ。さあ、行こう…」
二人は車で5分かからない、磯の海岸に向かった。
***
この日は抜けるような晴天で、風も穏やかな心地よい気候だった。
二人は4年前に初めてのキスを交わしたその場所に、並んで腰を下ろしていた。
「何しろ流子ちゃんには心配かけちゃったな。電話でもロクに話できなかったし…」
「サダト兄ちゃんは芸能人だもん。普通の人みたいにはいかないしさ。最低限はラインとかで知らせてもらってたから、私もだいたいは承知してるつもりだけど…。でも、あの女優とはホントにもう終わったの?大丈夫なの、お兄ちゃん的には…」
流子にとって、まずもっては”そこ”になる。
長島弓子とは別れたにしても、実際、サダトとしてはどう清算したのか…。
このことこそ、彼にとっても自分にとっても、さらに今後の”二人”としても一番肝心な点であったのだ。
言うまでもなく…。
***
「あの人とは間違いなく終わったよ。完全に別れた…」
この一言で流子はひとまずホッとした。
やはり直接会って、本人の口からその言葉を聞くまでは、どうしてもスッキリしないものがあったのだ。
「そうなのね。…あのう、これは立ち入ったことだけど、私はずっとサダト兄ちゃんのことが好きだったし、愛する気持ちはどんどん深くなってるから…。どうしても知りたいの。あの人とは、別れてもまだ気持ち、どうなのかな…。忘れられないとか…。そういうの…」
彼女にしてはいつになく歯切れの悪い尋ね方になっていた。
しかも、彼の顔を見ずに、両膝を抱えて下を向きながら…。
らしくない…。
それはサダトだけでなく、彼女自身もよく承知していた。
だが、この時はどうしてもこうなった。
それは、彼からのリターンが怖かったから…。
そういうことだった。
そして、その答えはサダトの口からすぐに返ったきた…。
その時…。
大岬のバスターミナルは、時間が止まった…。
「みんな、サダト兄ちゃんの味方だよ。みんな、待ってたんだよ。お兄ちゃんが帰って来るのを…」
「…」
サダトの胸の中で、流子は呟くようだった。
彼は流子の肩に回していた両手にギュッと力を入れ、それに無言で応えた。
そして、二人は流子の同級生たちの拍手の中にしばし身を置いた…。
***
「…さあ、最後の5人、急げ」
「ハイ‼」
「じゃあ、これで最後ですので自分も一緒で、すいません…」
引率の先生は最後のグループに混じり、”アイドル”甲田サダトとのスマホショットは円滑に終った。
「よし…、これで解散だ。皆、お疲れ様!」
皆は一様に満足そうな笑顔でバスターミナルから去って行った。
「先生、助かりました。ありがとうございます」
「いや…。とにかく間に合って良かった。じゃあ、また部活でな…」
○○教諭も早速スマホに目をやり、先程の撮影者からの画像受信をチェックするのだった。
***
「…なら、私たちも行こうか、B美」
「そうだね。…サダトさん、これからも流子をお願します。私たちも”応援”してますから。いろいろと…」
サダトは流子と顔を見合わせて、クスッと笑いをこぼしていた…。
この後A子とB美は、迎えに来ていた家族の車に乗ってバスターミナルを後にした。
「ごめんね、全員の写真とりに付き合ってもらっちゃって…」
「ははは…、先生が仕切ってくれたんでさ。いつもに比べりゃ、ぜんぜんだったよ。さあ、車乗ってよ」
流子は笑顔で会釈し、助手席に乗り込んだ。
「疲れてるところ悪いけど、このまま磯の海岸寄っていいかい?海見ながら話したいんだ」
「うん!海を前にして波音聞きながらお兄ちゃんと一緒に居れば、疲れなんてとれちゃうよ。さあ、行こう…」
二人は車で5分かからない、磯の海岸に向かった。
***
この日は抜けるような晴天で、風も穏やかな心地よい気候だった。
二人は4年前に初めてのキスを交わしたその場所に、並んで腰を下ろしていた。
「何しろ流子ちゃんには心配かけちゃったな。電話でもロクに話できなかったし…」
「サダト兄ちゃんは芸能人だもん。普通の人みたいにはいかないしさ。最低限はラインとかで知らせてもらってたから、私もだいたいは承知してるつもりだけど…。でも、あの女優とはホントにもう終わったの?大丈夫なの、お兄ちゃん的には…」
流子にとって、まずもっては”そこ”になる。
長島弓子とは別れたにしても、実際、サダトとしてはどう清算したのか…。
このことこそ、彼にとっても自分にとっても、さらに今後の”二人”としても一番肝心な点であったのだ。
言うまでもなく…。
***
「あの人とは間違いなく終わったよ。完全に別れた…」
この一言で流子はひとまずホッとした。
やはり直接会って、本人の口からその言葉を聞くまでは、どうしてもスッキリしないものがあったのだ。
「そうなのね。…あのう、これは立ち入ったことだけど、私はずっとサダト兄ちゃんのことが好きだったし、愛する気持ちはどんどん深くなってるから…。どうしても知りたいの。あの人とは、別れてもまだ気持ち、どうなのかな…。忘れられないとか…。そういうの…」
彼女にしてはいつになく歯切れの悪い尋ね方になっていた。
しかも、彼の顔を見ずに、両膝を抱えて下を向きながら…。
らしくない…。
それはサダトだけでなく、彼女自身もよく承知していた。
だが、この時はどうしてもこうなった。
それは、彼からのリターンが怖かったから…。
そういうことだった。
そして、その答えはサダトの口からすぐに返ったきた…。