*夜桜の約束?* ―再春―
「……ラブ、ホ」

「ええ?」

 さすがにモモは自分の耳を疑わずにはいられなかった。

 大きな瞳が更に大きく見開かれてしまう。

「……やっぱり、嫌だよな……」

 顔を横に向けたまま、眼だけを寄せてモモの驚きを確認した凪徒も、自分の発言の唐突さに無理はあるだろうと半分諦めていた。

 ──嫌か、嫌じゃないかって()かれたら、少なくとも嫌ではないと思うけれど……。

 凪徒の口から聞いたことのなかった三文字が、モモの頭の中をグルグルと駆け巡り、やがて中心に集まって、そんな見解を見出した途端、

「ええと……あの……多分、嫌ではないと思います……けど──」

 口を突いて出た言葉に、凪徒はパッと明るく顔を戻した。

「そっか!? んじゃ、行くぞ!」

 ──え? えええ!?

 間髪()れずに即答し、モモごと立ち上がって、そそくさと毛布を丸める凪徒。

 モモは唖然としながら立ち尽くし、「最後の『けど』は聞こえませんでしたか?」と言い出したい衝動に駆られたが、凪徒の急に上がったテンションに気圧(けお)され、何も言葉を掛けられなかった。


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