元カレと再共演することになりました
5年前の授賞式
カシャカシャカシャカシャ。
カシャカシャ。
カシャカシャカシャカシャ。
会場内にシャッター音が鳴り響く。
私を含めた最優秀女優賞候補の5名が会場に姿を現すと、カメラのシャッター音が鳴り響く。
上を見上げれば、数億円程するであろうシャンデリア。
会場には、隅々まで並べられた円卓テーブル、椅子。
まるで結婚式のような雰囲気が漂う。
私は、センター分けの前髪に、サラサラにしてもらったロングヘア。
スタイリストさんが用意してくれた真っ白なドレスを身に纏い、緊張する心を隠した。
ガクガクと震える足により一層力を入れ、自分の座席へと向かう。
椅子に腰掛けると、
右側には、
全身胸元の開いたドレス、鎖骨にはキラキラと光るラメ、10cm程もあるヒールを履いている国民的女優。
左側には、
髭を生やし、高級メガネに全身オーダーメイドのスーツを着ている誰もが知る俳優。
後ろを振り返ると、
杖をつきながら、席まで移動する、大御所俳優、大御所女優。
50年もの長い間、この芸能界という場所で活躍してきた重鎮たちだ。
私は、すごいところに来てしまった。
手足が震え、寒気までしていた。
手には拭いても拭いても、拭いきれないほどの汗。
ひたすらに真っ白なドレスの裾で拭く。
しばらくすると、
会場が真っ暗になり、舞台上にスポットライトが当てられていた。
その先には、司会者。
彼らの手には、マイク。
それからしばらくのことは、あまりの緊張で覚えていない。
そしてついにその時がやってきた。
「今年の最優秀女優賞は…」
綺麗なアナウンサーの声が私の心臓の鼓動をより高鳴らせた。
「〈届かぬ想い〉で主演を務めました佐藤リサさんです。おめでとうございます。」
「え?私?」
私は、あまりの衝撃のあまり、椅子から転げ落ちそうになってしまった。
パチパチパチパチパチパチパチパチ。
会場内からは、溢れんばかりの拍手。
私は、急いで立ち上がる。
私は、右往左往に首が取れるのではないかというほど、
何度も何度もお辞儀した。
ステージ場に上がるまで、一度も視線をあげずに、
頭を下げ続けた。
まるで何故か悪いことをしてしまったのではないかというほどだ。
ステージ上に上がると、
杖のついた白い髭のプレゼンター俳優、大河ドラマで徳川家康を演じていた俳優。
徳川家康が大好きな私にとっては、
夢のような光景だった。
「おめでとう。」
徳川家康様が私に花束を渡し、握手を交わしてくれた。
それだけで今日来て良かったと、
今まで頑張ってきて良かったと、
そう思えた瞬間だった。
私の目の前には、マイク。
昨日の晩、
受賞した時のために、何度も練習したスピーチ。
お風呂の中でのぼせるまで練習したスピーチ。
何故か思い出せない。
何を言おう?
何言うんだっけ?
え?
どうしよう?
目の前に広がる光景。
皆が私を睨んでいるように見えてきた。
早くなんか話せよという圧。
「あ、ありがとうございます。」
やばい。緊張する。
何言おう。
遠くを見つめると、大きく手を振っている鬼頭マネージャー。
「こ!」
小柄な身体を精一杯広げながら、
「こ!」
と叫んでいる。
あ!そうだ。
「こ、今回受賞させて頂いたという事実にまだ実感が湧かないのですが、この勢いのまま日本を代表する女優になれるよう今後も努力を続けたいと思います。」
マネのおかげでどうにか思い出せた。
ありがとう。鬼頭マネージャー。
これは、5年前、私が23歳の時の授賞式での出来事だ。
カシャカシャ。
カシャカシャカシャカシャ。
会場内にシャッター音が鳴り響く。
私を含めた最優秀女優賞候補の5名が会場に姿を現すと、カメラのシャッター音が鳴り響く。
上を見上げれば、数億円程するであろうシャンデリア。
会場には、隅々まで並べられた円卓テーブル、椅子。
まるで結婚式のような雰囲気が漂う。
私は、センター分けの前髪に、サラサラにしてもらったロングヘア。
スタイリストさんが用意してくれた真っ白なドレスを身に纏い、緊張する心を隠した。
ガクガクと震える足により一層力を入れ、自分の座席へと向かう。
椅子に腰掛けると、
右側には、
全身胸元の開いたドレス、鎖骨にはキラキラと光るラメ、10cm程もあるヒールを履いている国民的女優。
左側には、
髭を生やし、高級メガネに全身オーダーメイドのスーツを着ている誰もが知る俳優。
後ろを振り返ると、
杖をつきながら、席まで移動する、大御所俳優、大御所女優。
50年もの長い間、この芸能界という場所で活躍してきた重鎮たちだ。
私は、すごいところに来てしまった。
手足が震え、寒気までしていた。
手には拭いても拭いても、拭いきれないほどの汗。
ひたすらに真っ白なドレスの裾で拭く。
しばらくすると、
会場が真っ暗になり、舞台上にスポットライトが当てられていた。
その先には、司会者。
彼らの手には、マイク。
それからしばらくのことは、あまりの緊張で覚えていない。
そしてついにその時がやってきた。
「今年の最優秀女優賞は…」
綺麗なアナウンサーの声が私の心臓の鼓動をより高鳴らせた。
「〈届かぬ想い〉で主演を務めました佐藤リサさんです。おめでとうございます。」
「え?私?」
私は、あまりの衝撃のあまり、椅子から転げ落ちそうになってしまった。
パチパチパチパチパチパチパチパチ。
会場内からは、溢れんばかりの拍手。
私は、急いで立ち上がる。
私は、右往左往に首が取れるのではないかというほど、
何度も何度もお辞儀した。
ステージ場に上がるまで、一度も視線をあげずに、
頭を下げ続けた。
まるで何故か悪いことをしてしまったのではないかというほどだ。
ステージ上に上がると、
杖のついた白い髭のプレゼンター俳優、大河ドラマで徳川家康を演じていた俳優。
徳川家康が大好きな私にとっては、
夢のような光景だった。
「おめでとう。」
徳川家康様が私に花束を渡し、握手を交わしてくれた。
それだけで今日来て良かったと、
今まで頑張ってきて良かったと、
そう思えた瞬間だった。
私の目の前には、マイク。
昨日の晩、
受賞した時のために、何度も練習したスピーチ。
お風呂の中でのぼせるまで練習したスピーチ。
何故か思い出せない。
何を言おう?
何言うんだっけ?
え?
どうしよう?
目の前に広がる光景。
皆が私を睨んでいるように見えてきた。
早くなんか話せよという圧。
「あ、ありがとうございます。」
やばい。緊張する。
何言おう。
遠くを見つめると、大きく手を振っている鬼頭マネージャー。
「こ!」
小柄な身体を精一杯広げながら、
「こ!」
と叫んでいる。
あ!そうだ。
「こ、今回受賞させて頂いたという事実にまだ実感が湧かないのですが、この勢いのまま日本を代表する女優になれるよう今後も努力を続けたいと思います。」
マネのおかげでどうにか思い出せた。
ありがとう。鬼頭マネージャー。
これは、5年前、私が23歳の時の授賞式での出来事だ。