元カレと再共演することになりました

彼が私を裏切った真実

彼女がそばにあった椅子に腰掛ける。

彼女の側には、ヘアメイクさん、スタイリストさん、現場マネージャー、チーフマネージャーをはじめとする多くのスタッフ。

彼女が移動するたび、その群れも同時に異動する。

そんな彼女の目の前に立つ私。

彼女は、私の頭からつま先までをじっくりと見た。

「私程の大女優がこんな落ちぶれ女優の下で脇役としてこのドラマに出るなんて、私のプライドが許さないわ。」

そう言って彼女は、タバコを加える。

隣にいた長身のメガネをかけた男性がライターを手に、彼女のタバコに火をつける。

「す、すみません。」

私がそう言うと、

「謝らないで。余計に惨めじゃない。」

彼女は、私の顔に向けて、口から息を吐く。

タバコの嫌な匂いがした。

彼女は、立ち上がり、私の元までやってきた。

「私は、ルイくんに頼まれたから出るのよ。」

私の耳元で囁く。

「私とルイくんは、昔から切っても切れない絆で結ばれてるの。あなたみたいな落ちぶれ女優に邪魔されても、切れないんだからね？」

黙り込んでしまう私。

「あなた、何か言うことないの？私に。」

「いえ…何も…」

「本当は、怒ってるんでしょ？昔あなたから彼を奪ったこと。あの時は、ごめんね？でも私、返す気ないから。彼のこと。」

返すってどういうこと？

彼は、彼女と今も付き合ってるってこと？

じゃあ邪魔者は、私ってこと？

彼が彼女のことを直接オファーしたってことだよね？

ルイはなんでそんなことをしたんだろう。

私の脳内は、キャパオーバー寸前だった。

このままここにいるのは、辛すぎる。

逃げ出したい。

そんなことを考えていると、美しい声が聞こえてきた。

「次のシーンはじめます。スタンバイお願いします。」

その声と共に、さくらさんがスタンバイエリアへと向かう。