元カレと再共演することになりました

台本

1人残された私は、スタジオ内に置かれていた椅子に腰掛けた。カバンの中から台本を探し読み始めることにした。

【レオとみなみがクリスマスの日一緒にいる写真を週刊誌が掲載した。そのことを知ったあずさは、ショックを受ける。そして、あずさは、一方的に別れを告げる。】

「この出来事もそのままなんだ…」

実際の出来事と台本の中身があまりにも同じで、私は気づくと独り言を発していた。

私はテーブルに置かれていたコーヒーを手に次のページをめくった。

【一方的に別れを告げられたレオは、あずさに真実を告げられないままでいた。そして仕事も手に付かず、荒れた日常を過ごしていた。】

私は、衝撃のあまり、コーヒーをこぼしてしまう。

「リサさん！大丈夫ですか？」

近くにいた下田くんが慌てて私に駆け寄ってくれた。

「ごめんごめん。」

私は彼に謝り、テーブルにこぼれたコーヒーを必死にティッシュで拭こうとした。

「あああ。僕がやりますよ。マネージャーなんで。」

「ごめんね。」

彼が私からティッシュを取りあげ、急いでテーブルを拭いてくれた。

「リサさん…最近どうしたんですか？」

彼はテーブルを拭きながら、私の顔を覗き込む。

「どうしたって？」

私はとぼけてみせた。

「こないだは泣いてましたし、今日はなんかずっと様子が変なんで。」

「やっぱりわかるよね…」

彼は、頷く。

「友達の話なんだけど…」

女子の8割が使ったことがある枕詞で、保険をかけて彼に相談してみた。

「浮気が勘違いの時ってあるの？」

彼はものすごく驚いた顔をしていた。

「浮気ですか？」

私はうなずく。

「そうですね。付き合ってることがわかってて仕掛けてくる女の子とかいますからね。僕にその気がなくても、その女が匂わせって言うことをして、それを見た彼女が勘違いするって言う事はよくあることらしいですよ。だから、大事なのは、相手に直接聞くってことですね。」

「そうだよね…」

思ったよりも、しっかりとした答えが返ってきた。

若いのに、私よりも倍も恋愛について理解しているとそう思った。

え？真実ってどういうこと？

ルイは、私と別れたあと、さくらさんと付き合ったんじゃないの？

私と別れた後、涙が荒れた日々を過ごしていたなんて知らなかった。

先ほど、マネー私の脳内は、こんなことばかり考えていたけれども、彼のおかげで、やはり本人に聞こうと、そう決意できたのである。

「次のシーンの撮影始めます。」

次のシーンの撮影が始まった。