元カレと再共演することになりました
想いを伝える
「では次のシーン始めます。よーい、アクション。」
〈それから僕は、あずさにもう一度会える方法を試した。〉
「アキラさん、あずささんと連絡取れました?」
「全然駄目だった。友達にも連絡したけど、あずさの連絡先知らないって。」
「そうですか。思ったんですけど、アキラさんって有名人じゃないですか?テレビを通して、気持ちを伝えるっていうのは、どうですか?」
「気持ちを伝えるってどうやって?」
「例えば、テレビや雑誌で過去の恋愛について話したり、理想の相手について話したりアピールするんです。テレビでレオさんを見ない日なんてないですから必ずあずささんも見てくれているはずです。」
「そうだな。俺頑張るわ。」
「はい!」
〈それから僕は、テレビや雑誌などを通して彼女へ気持ちを伝えた…だが彼女の耳には届いていたかどうかは、分からないまま3年という月日が過ぎていった。〉
「はい。カット!」
今日の撮影が終わり、すぐにでも彼の元へ駆け寄りたい気持ちでいっぱいだった。
でもそれは叶わなかった。
最終回目前に迫った私たちは、テレビ出演、雑誌の取材などに追われ、気づけば家に着いていた。
また彼に聞くことができなかった。
私は、彼と別れてから彼を避ける日々を続けていた。
彼が出ているドラマ、番組は、極力見ないようにしていた。
もちろん雑誌も。
3年間も彼が私に対して思いを伝えてくれていたなんて思いもしなかった。
申し訳なささで心が潰れそうになった私は、慌てて動画サイトで彼の出演番組を探した。
「今回のゲストは、西園寺るいさんです。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「今回の作品は、ラブストーリーということですけど、西園寺くんは、振られたことなどありますか?」
「もちろんありますよ。」
「え?そうなんですか?」
「はい。当時付き合っていた彼女に突然電話で別れようって言われてしまったこともありました。まぁ僕が悪いんですけど。」
「西園寺くんを振る人なんているんですね。」
「いやいや普通にありますよ。僕は、自分でいうのもなんですが、忙しすぎるので。すれ違ってしまいますね。彼女に寂しい気持ちをさせてしまうんです。」
「そうなんですね。西園寺くんのズバリ理想の相手は?」
「理想の相手ですか…」
「僕が欲しい言葉をくれる人です。この職業は、どうしても自信が喪失してしまう時があります。そんな時に励ましてくれるそんな人がいいですね。あと僕の知らない才能を信じて、僕の仕事を理解してくれる人ですね。」
「素敵ですね。」
どの番組を見ても彼は、私のことを話してくれてした。
彼は、こんなにも私に気持ちを伝えてくれているのに、私は、この3年間何もすることができなかった。
怖くて逃げていただけだった。
この時誓ったのだ。
これからは、私が彼に想いを伝えるときだと。