元カレと再共演することになりました

ドラマのラストシーン

「次のシーン始めます。よーいアクション。」

〈3年経った頃、僕に新しい恋愛ドラマの話がやって来た。〉

『今度の恋愛ドラマの内容なんだけど、どんな感じがいい？』

プロデューサーが初めて内容について僕に意見を求めてくれたのだ。

こんなチャンス二度とないと思った僕は、咄嗟にこう言い放った。

『僕の過去の恋愛をドラマにするのは、どうですか？』

『それいいじゃないか！』

ダメだと言われると思っていた僕は、正直驚いた。

『本当ですか？』

『おう。脚本家の佐々木さんにも話してみるよ。』

『本当ですか？ありがとうございます。』

こうして僕は、佐々木さんに会うことになった。

「佐々木です。できる限りリアリティーに近い脚本を制作したいと思います。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

そして僕は、佐々木さんに僕があずさと出会ってからこれまでの話をした。

全部を話し終えた時、佐々木さんは、僕の顔を覗きながら心配そうにこう言った。

「じゃあまだ彼女の誤解を解けてないってことなのね。」

「はい。」

「芸能人って大変なのね。」

「今回のドラマを彼女にも見てもらって誤解を解きたいんです。よろしくお願いします。」

「分かったわ。任せて！」

〈こうして僕は、あずさとの思い出をドラマにすることで彼女に想いを伝えることにしたのだった。その直後だった。彼女に再会したのは。〉

「アキラ、今日は、ドラマの打ち合わせのためにテレビ局に向かう予定だから。」

「はい。」

〈ある日、マネージャーに連れられ、テレビ局へと向かっていた僕は、街中である人を見かけた。僕がこの世で最も会いたかった人だ。〉

「マネージャー、ちょっと用事を思い出したから先に行っててください。」

「どうしたの？」

「すいません。すぐに向かうんで。」

〈マネージャーが大声で叫んでいる中、僕は、走り出した。〉

「申し訳ありませんでした。」

3年ぶりに見つけた彼女は、誰かに謝っていた。

「謝ったら許されると思っているの？」

僕は、そんな彼女を見て、彼女に怒っていたおばさんに話しかけた。

「どうされたんですか？」

「どうって彼女が私の服に飲み物をこぼしたのよ。」

勢いよく僕の方を見たおばさんは、僕を見た瞬間驚いた顔をし、声色を変えてこう話しかけてきた。

「…え？アキラくん？もしかしてあの人気俳優のアキラくんなの？」

「え？アキラ…」

彼女も僕に気づいたようだった。

「あ！僕をご存じですか？ありがとうございます。お母さん、服が汚れていますね。僕のジャケットを使ってください。」

僕は、そのおばさんに僕が着ていたジャケットを渡した。

「え？いいの？お姉さん、ごめんね。もう気にしなくていいわよ。」

そう言っておばさんは、この場を立ち去った。

その後私たち2人には、静寂の時間が流れた。

「アキラ、ありがとう。」

「ああ。久しぶりだな。あずさ。」

「うん。久しぶりだね。どうしてここにいるの？」

「たまたまあずさを見かけて来てみたら、おばさんに怒られてたからさ。大丈夫？」

「うん。もう大丈夫だよ。アキラが来てくれたから。」

「おう。あずさ、僕もう行かないといけないから、新しい電話番号教えてくれない？」

僕がそう言うと、電話番号を教えてくれた。

「ありがとう。」

そして僕は、去り際に伝えたのだ。

「これ、今度僕が主演するドラマの脚本なんだ。これを読んで、何か感じ取ってくれたら、連絡してほしい。」

「分かった。」

そう言って僕は、その場を去った。

「はい。カット。一旦休憩挟みます。」