元カレと再共演することになりました
再会
私は、彼に貰った台本を読んだ。
そこには、私と付き合う前の話、付き合ってからの幸せな時間、別れるまでの過程の全てが書かれていた。
気づくと、私は、泣いていた。
私は、勘違いをしていたのだ。
彼は、浮気なんてしていなかったし、
ずっと私だけを愛してくれていたのだ。
私は、震える手を必死に抑え、
さっき貰った番号をスマホに入力した。
プルルルプルルルルプルルルル
電話の音が鳴り響く。
私の心臓は、口から出てきそうだった。
「もしもし。」
「あずさ?」
彼の優しい声がした。
私は、頷いた。
「台本、読んだよ。ごめんね…私。私…」
「あずさ、今どこにいる?」
言葉に詰まって何も言えない私に、彼が私の居場所を聞いた。
「家の近くの公園」
「分かった。今すぐ行く。」
プツッ。ブーブーブーブー。
電話の切れた音がした。
30分ぐらいが経った頃、彼が現れた。
ハァハァハァハァハァハァハァ。
彼の乱れた息が聞こえる。
「あずさ。」
彼の額には、大粒の汗。
それほど急いで来てくれたことが分かった。
「台本読んでくれた?」
私は、頷く。
「ごめんね。私勘違いしてた。浮気なんてしてなかったのに、疑ってごめん。」
「いや俺のほうこそごめん。」
私たち2人に沈黙の時間が訪れた。
沈黙を破ったのは、彼だった。
「俺今でもあずさのこと愛してる。あずさが今でも僕のことを思ってくれてるなら受け取って欲しい。」
彼は、私の目の前にひざまずく。
彼の手には、大きなバラの花束。
私は、それを受け取った。
「ありがとう。私今もあなたのこと愛してる。」
私は、勇気を出して声にする。
ガシッ
彼が勢い良く私をハグした。
「あ、ありがとう。ありがとうあずさ。」
彼の鼻のすする音が聞こえた。
泣いているのだ。
彼は、私から離れると、
左側のポケットから小さな箱を取り出した。
そしてもう一度、私の目の前に跪き、その箱をあける。
目を開けていられない程のダイヤが光っていた。
「俺と結婚してください。」
私の目には大粒の涙が伝う。
「はい。お願いします。」
すると、彼が私の薬指にリングをはめてくれた。
次の瞬間、私の視界が高くなったのを感じた。
「あずさ、軽いね。」
「ちょ、やめてよ。」
「お姫様になれた気分でしょ?」
「う、うるさい。」
彼は、お姫様抱っこをしてくれた。
私は、この世で1番幸せな彼だけのシンデレラになれました。
「カット。OK。」
監督の今までに聞いたことないような大きな声がスタジオ内に響き渡った。