元カレと再共演することになりました
元カレに再会?
彼は、超人気ボーイズグループRabbitの絶対的エース西園寺ルイ。アイドル業の傍ら、数々の作品で主演を務める俳優でもある。
「鬼頭プロデューサー!お疲れ様です!」
180センチ以上の調心、センター分けの前髪、キリッとした目元。
頭のてっぺんから足のつま先まで発光しているのではないかというような輝き。
彼にスポットライトが当たっているのではない、
彼がスポットライトなのではないかと思えるほどの発光ぶり。
あ、芸能人だ。
ふとそう思った。
「おう!ルイじゃねぇか!!探していたんだよ!!!今度の作品で主演をしてくれるって聞いて、嬉しかったよ。期待しているからな?」
「はい。もちろんです。」
次の恋愛ドラマは、彼が主演をするんだ。
なら私がヒロインなど絶対に無理だ。
あまりにも不釣り合いすぎる。
そんなことを考えていると、彼がこちらを向いて話しかけてきた。
「あ!リサちゃん?久しぶりだね。覚えてる?〈届かぬ想い〉っていう作品で共演したよね?」
目の中にダイヤを住まわせているのではないかと思えるほどの目の輝きで私を見つめる。
なんで私なんかに声をかけてきたんだろう。
人気者の彼が、落ちぶれ女優の私に話しかけて何の得があるんだろう。
昔あんなことがあったのに、なぜ彼は普通でいられるのだろうか?
「おーい!リサちゃん?リサちゃん?」
「あ!ごめん。」
彼の綺麗な声で現実へと引き戻される。
「やっぱり僕のことなんて覚えてないよね…」
彼は、悲しい表情を浮かべた。
「何言ってるの?覚えてるに決まってるでしょ。この世であなたのこと覚えてない人なんていないでしょ。国民的スターなんだからさ…」
「リサちゃんやめてよ。」
彼は、少年のような表情を浮かべながら、恥ずかしがっているように見えた。
私たちが話してると、ずっとその様子を静かに見つめていた原さんが会話に入ってきた。
「2人、知り合い?」
「はい。以前共演したことがありまして。」
「そうなんだ。」
そんな私たちを見て、KYなのか営業熱心なのか鬼頭マネージャーが口を開いた。
「原さん!!!」
鬼頭さんの目の中に燃えたぎる炎が見えた。
あ、うちの鬼頭に営業スイッチが入ったぞ、これは。
目が決まりきってるぞ、これは。
「2人は、佐藤が8年前に主演女優賞を獲得した〈届かぬ想い〉で共演してるんです。その時は、W主演で、現在も2人のファンは多くて、リサとるいくんの恋愛ものをもう一度見たいっていうファンも多くいるんですよ。」
鬼頭さんは、両手をグーにしながら、訴えかける。
ここぞとばかり鬼頭マネが営業をかけている。
やめてくれぇぇぇ。
マネよ、落ち着いてくれ。
落ち着いてくれぇぇぇ。
「たしかに…届かぬ想いは、俺も見たが、かなり良かったしなぁ…考えておくよ。」
原さんは、こめかみに手を当てながらそう言い放ち、この場を去った。
「よかったね。リサ!!!」
鬼頭さんの目の中には、多くのダイヤが見えるほどの瞳の輝きを感じた。
そして、満面の笑みで私の顔を見た。
私は、顔の動かせるパーツを最大限動かし、マネに訴えかける。
鬼頭さん!!!
君は何かを忘れているぞ。
気づけぇぇぇ。
気づいてくれぇぇぇ。
すると、私の表情を見て何かを思い出したマネ。
「あ、、、」
やっと気づいたか、鬼頭よ。
彼女の顔色が徐々に青ざめていくのを感じた。
「あ、ごめん。」
彼女のその言葉がより、私たち3人をより気まずくさせた。
「あ、ごめん。」
鬼頭よ、何度謝ってもこの状況は、打破できないぞ?
どうするんだ?
私とマネが顔のパーツで無言の対決をしていると、彼が口を開いた。
「リサちゃん!久しぶりだね。元気だった?」
彼の表情には、一切の曇りがない。純粋無垢な目をしていた。
「うん。元気。るいくんは?」
「俺もまぁまぁ元気かな。」
彼は、言葉とは裏腹に疲れた表情をしていた。私は、そんな彼を見て思わず、
「そ、そうなんだ…忙しそうだけど、ちゃんと休めてる?」
「うん。」
「なら良かった。」
「心配してくれるの?」
彼は、子犬のような可愛げのある表情を向けてきた。
「当たり前でしょ。」
「ありがとう…あ、あのさ!」
彼が何かを言おうとしたその時だった。
「るい!ここに居たの?どこに行ったのかと思ったじゃない。」
黒髪ロングの女性。
縮毛矯正を絶対にしているであろうと思える程のストレートヘア。
今どき絶滅危惧種であろう髪型をした女性。
今にも落ちてきそうな細長メガネをひたすら片手で上げながら、こちらへと走ってくる。
彼女は、ルイのマネージャーである如月さん。
ハァハァハァハァハァハァ。
深く乱れた息。額には大粒の汗。
彼の元まで到着すると、
両膝の上に手を置き、下を向きながら深呼吸をしている。
「るい!るい!るい!ここに居たの…ドラマの打ち合わせ中に急に消えるからどこ行ったかと思ったじゃない。」
「すみません。如月さん。」
あれ?
原プロデューサーに用があったんじゃなかったんだ。
え?私にわざわざ話しかけに来たってこと?
もしかして営業に手こずっている私たちを助けてくれたの?
「あ!」
それまでずっと下を向いていた彼女が、私たちの姿に気づいたのは、それから1分後のことだった。
「あ、、、鬼頭さん、リサさん。お、お久しぶりです。」
如月さんは、私の目を見て、思わず逸らした。
そして、嫌そうな顔をして、ルイの腕を引っ張り、自分の方へと引き寄せた。
何故こんなにも気まずい空気が流れているかというと、
私たちは、かつて恋人同士だったからだ。
そして2人のマネージャーもそのことを知っている。
私たちは、10年前届かぬ想いという作品で共演後すぐ恋人同士になったのだ。
この作品に出演後、私は国民的女優の仲間入り、
そして彼は、国民的アイドルグループのエースとして活動の幅を広げていった。
しかし、容姿端麗で性格も良い人気アイドルの彼を周りの女性が放っておくはずがなかった。
彼が私以外の女性と週刊誌に撮られてしまったのだ。
いわゆる浮気だ。
このことがショックで私は、彼に一方的に別れを告げたのだった。
それから5年間彼には会っていなかった。
そのためこんなにも気まずい空気が流れていたのだ。
「お久しぶりです。今日はどうされたんですか?うちのルイに何か用ですか?」
如月さんが再び、ルイの腕を掴み、姑かのように私たちを牽制し始めた。
「いや。そういう訳じゃ。私たちは、リサの営業に来たの。」
「あ…営業ですか。うちのルイに何か用がある際は、私を通して貰えると助かります。」
彼女がそう言うと、
「如月さん!」
ルイが勢いの良いスマッシュを打った。
「でも…」
「僕が話しかけただけだから。」
「あら、そうなの?」
「そうだよ。もうそうやって根回しするのやめてよ。周りの人達困ってるからさ。」
「いや、こっちは、あなたのことを考えてやってるんでしょ。」
「だからそれが迷惑だって言ってんじゃん。」
双方、譲らないラリーが始まった。
ルイvs如月のラリーだ。
この2人のラリーを制したのは、彼女だった。
強烈なスマッシュを決める。
「いやいや、元はと言えば、あんたのせいでしょ?あんたが5年前に週刊誌に撮られなければこんなことになってないでしょ?」
あ。如月さん…
それ、今言う?
とてつもなく気まずい空気が再び流れているぞ。
あああどうしてくれるんだ?
そんな空気を清浄するために、うちの敏腕マネージャーが優しい優しいスマッシュを決めた。
「ご、ごめんね、如月ちゃん。私が営業手こずってたからルイくんが助けてくれたのよ。今度から気をつけるから、ね?」
「いえ。こちらこそ勘違いをしてしまいすみません。で、では私たち打ち合わせがあるので、ここで失礼します。」
「リサちゃん、またね。」
「うん。またね。」
「ルイ!早く!急ぐわよ。」
「ああ。」
彼らは、嵐のように過ぎ去った。
何故彼は、わざわざ私に話しかけてきたのだろう。
鬼頭プロデューサーに冷たくされていたのを見て、助けてくれたのだろうか?
いや、考えすぎよね…彼はアイドルであり俳優。
誰にでも愛想よく話しかけるのよね。そうそう。
乱れた心を整えるため自分にそう言い聞かせた。
そんな私を見て鬼頭マネージャーが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「リサ…ごめんね。さっき。私営業かけるのに必死でリサがるいくんと付き合ってたのすっかり忘れてて…」
「いや、いいんです。もう昔の話なので。」
「そう?…」
彼と別れた後、精神ズタボロになっていた私を知っている鬼頭さんは、心配そうに話しかけてくれた。
「でもさすがに元彼との共演は、辛いかもです。せっかく営業をかけてくれたのにすみません。」
「全然!気にしないで!他の仕事持ってくるからさ。」
「ありがとうございます。」
もう二度と彼に会うことがないと思っていた私だったが、まさかあんなことが起きるとは、この時の私は、思いもしていなかった。
「鬼頭プロデューサー!お疲れ様です!」
180センチ以上の調心、センター分けの前髪、キリッとした目元。
頭のてっぺんから足のつま先まで発光しているのではないかというような輝き。
彼にスポットライトが当たっているのではない、
彼がスポットライトなのではないかと思えるほどの発光ぶり。
あ、芸能人だ。
ふとそう思った。
「おう!ルイじゃねぇか!!探していたんだよ!!!今度の作品で主演をしてくれるって聞いて、嬉しかったよ。期待しているからな?」
「はい。もちろんです。」
次の恋愛ドラマは、彼が主演をするんだ。
なら私がヒロインなど絶対に無理だ。
あまりにも不釣り合いすぎる。
そんなことを考えていると、彼がこちらを向いて話しかけてきた。
「あ!リサちゃん?久しぶりだね。覚えてる?〈届かぬ想い〉っていう作品で共演したよね?」
目の中にダイヤを住まわせているのではないかと思えるほどの目の輝きで私を見つめる。
なんで私なんかに声をかけてきたんだろう。
人気者の彼が、落ちぶれ女優の私に話しかけて何の得があるんだろう。
昔あんなことがあったのに、なぜ彼は普通でいられるのだろうか?
「おーい!リサちゃん?リサちゃん?」
「あ!ごめん。」
彼の綺麗な声で現実へと引き戻される。
「やっぱり僕のことなんて覚えてないよね…」
彼は、悲しい表情を浮かべた。
「何言ってるの?覚えてるに決まってるでしょ。この世であなたのこと覚えてない人なんていないでしょ。国民的スターなんだからさ…」
「リサちゃんやめてよ。」
彼は、少年のような表情を浮かべながら、恥ずかしがっているように見えた。
私たちが話してると、ずっとその様子を静かに見つめていた原さんが会話に入ってきた。
「2人、知り合い?」
「はい。以前共演したことがありまして。」
「そうなんだ。」
そんな私たちを見て、KYなのか営業熱心なのか鬼頭マネージャーが口を開いた。
「原さん!!!」
鬼頭さんの目の中に燃えたぎる炎が見えた。
あ、うちの鬼頭に営業スイッチが入ったぞ、これは。
目が決まりきってるぞ、これは。
「2人は、佐藤が8年前に主演女優賞を獲得した〈届かぬ想い〉で共演してるんです。その時は、W主演で、現在も2人のファンは多くて、リサとるいくんの恋愛ものをもう一度見たいっていうファンも多くいるんですよ。」
鬼頭さんは、両手をグーにしながら、訴えかける。
ここぞとばかり鬼頭マネが営業をかけている。
やめてくれぇぇぇ。
マネよ、落ち着いてくれ。
落ち着いてくれぇぇぇ。
「たしかに…届かぬ想いは、俺も見たが、かなり良かったしなぁ…考えておくよ。」
原さんは、こめかみに手を当てながらそう言い放ち、この場を去った。
「よかったね。リサ!!!」
鬼頭さんの目の中には、多くのダイヤが見えるほどの瞳の輝きを感じた。
そして、満面の笑みで私の顔を見た。
私は、顔の動かせるパーツを最大限動かし、マネに訴えかける。
鬼頭さん!!!
君は何かを忘れているぞ。
気づけぇぇぇ。
気づいてくれぇぇぇ。
すると、私の表情を見て何かを思い出したマネ。
「あ、、、」
やっと気づいたか、鬼頭よ。
彼女の顔色が徐々に青ざめていくのを感じた。
「あ、ごめん。」
彼女のその言葉がより、私たち3人をより気まずくさせた。
「あ、ごめん。」
鬼頭よ、何度謝ってもこの状況は、打破できないぞ?
どうするんだ?
私とマネが顔のパーツで無言の対決をしていると、彼が口を開いた。
「リサちゃん!久しぶりだね。元気だった?」
彼の表情には、一切の曇りがない。純粋無垢な目をしていた。
「うん。元気。るいくんは?」
「俺もまぁまぁ元気かな。」
彼は、言葉とは裏腹に疲れた表情をしていた。私は、そんな彼を見て思わず、
「そ、そうなんだ…忙しそうだけど、ちゃんと休めてる?」
「うん。」
「なら良かった。」
「心配してくれるの?」
彼は、子犬のような可愛げのある表情を向けてきた。
「当たり前でしょ。」
「ありがとう…あ、あのさ!」
彼が何かを言おうとしたその時だった。
「るい!ここに居たの?どこに行ったのかと思ったじゃない。」
黒髪ロングの女性。
縮毛矯正を絶対にしているであろうと思える程のストレートヘア。
今どき絶滅危惧種であろう髪型をした女性。
今にも落ちてきそうな細長メガネをひたすら片手で上げながら、こちらへと走ってくる。
彼女は、ルイのマネージャーである如月さん。
ハァハァハァハァハァハァ。
深く乱れた息。額には大粒の汗。
彼の元まで到着すると、
両膝の上に手を置き、下を向きながら深呼吸をしている。
「るい!るい!るい!ここに居たの…ドラマの打ち合わせ中に急に消えるからどこ行ったかと思ったじゃない。」
「すみません。如月さん。」
あれ?
原プロデューサーに用があったんじゃなかったんだ。
え?私にわざわざ話しかけに来たってこと?
もしかして営業に手こずっている私たちを助けてくれたの?
「あ!」
それまでずっと下を向いていた彼女が、私たちの姿に気づいたのは、それから1分後のことだった。
「あ、、、鬼頭さん、リサさん。お、お久しぶりです。」
如月さんは、私の目を見て、思わず逸らした。
そして、嫌そうな顔をして、ルイの腕を引っ張り、自分の方へと引き寄せた。
何故こんなにも気まずい空気が流れているかというと、
私たちは、かつて恋人同士だったからだ。
そして2人のマネージャーもそのことを知っている。
私たちは、10年前届かぬ想いという作品で共演後すぐ恋人同士になったのだ。
この作品に出演後、私は国民的女優の仲間入り、
そして彼は、国民的アイドルグループのエースとして活動の幅を広げていった。
しかし、容姿端麗で性格も良い人気アイドルの彼を周りの女性が放っておくはずがなかった。
彼が私以外の女性と週刊誌に撮られてしまったのだ。
いわゆる浮気だ。
このことがショックで私は、彼に一方的に別れを告げたのだった。
それから5年間彼には会っていなかった。
そのためこんなにも気まずい空気が流れていたのだ。
「お久しぶりです。今日はどうされたんですか?うちのルイに何か用ですか?」
如月さんが再び、ルイの腕を掴み、姑かのように私たちを牽制し始めた。
「いや。そういう訳じゃ。私たちは、リサの営業に来たの。」
「あ…営業ですか。うちのルイに何か用がある際は、私を通して貰えると助かります。」
彼女がそう言うと、
「如月さん!」
ルイが勢いの良いスマッシュを打った。
「でも…」
「僕が話しかけただけだから。」
「あら、そうなの?」
「そうだよ。もうそうやって根回しするのやめてよ。周りの人達困ってるからさ。」
「いや、こっちは、あなたのことを考えてやってるんでしょ。」
「だからそれが迷惑だって言ってんじゃん。」
双方、譲らないラリーが始まった。
ルイvs如月のラリーだ。
この2人のラリーを制したのは、彼女だった。
強烈なスマッシュを決める。
「いやいや、元はと言えば、あんたのせいでしょ?あんたが5年前に週刊誌に撮られなければこんなことになってないでしょ?」
あ。如月さん…
それ、今言う?
とてつもなく気まずい空気が再び流れているぞ。
あああどうしてくれるんだ?
そんな空気を清浄するために、うちの敏腕マネージャーが優しい優しいスマッシュを決めた。
「ご、ごめんね、如月ちゃん。私が営業手こずってたからルイくんが助けてくれたのよ。今度から気をつけるから、ね?」
「いえ。こちらこそ勘違いをしてしまいすみません。で、では私たち打ち合わせがあるので、ここで失礼します。」
「リサちゃん、またね。」
「うん。またね。」
「ルイ!早く!急ぐわよ。」
「ああ。」
彼らは、嵐のように過ぎ去った。
何故彼は、わざわざ私に話しかけてきたのだろう。
鬼頭プロデューサーに冷たくされていたのを見て、助けてくれたのだろうか?
いや、考えすぎよね…彼はアイドルであり俳優。
誰にでも愛想よく話しかけるのよね。そうそう。
乱れた心を整えるため自分にそう言い聞かせた。
そんな私を見て鬼頭マネージャーが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「リサ…ごめんね。さっき。私営業かけるのに必死でリサがるいくんと付き合ってたのすっかり忘れてて…」
「いや、いいんです。もう昔の話なので。」
「そう?…」
彼と別れた後、精神ズタボロになっていた私を知っている鬼頭さんは、心配そうに話しかけてくれた。
「でもさすがに元彼との共演は、辛いかもです。せっかく営業をかけてくれたのにすみません。」
「全然!気にしないで!他の仕事持ってくるからさ。」
「ありがとうございます。」
もう二度と彼に会うことがないと思っていた私だったが、まさかあんなことが起きるとは、この時の私は、思いもしていなかった。