元カレと再共演することになりました
私たちが付き合ったきっかけ
今回のドラマは、主人公である国民的アイドルの武田アキラとOLの斉藤あずさの格差恋愛がテーマ。
題名は、〈僕が伝えたい君への想い〉。
高校生の同級生だったアキラとあずさは、文化祭の劇で主演とヒロインを演じたことがきっかけで付き合うこととなる。
「よーい、アクション。」
あずさ『アキラ、大丈夫?台詞上手く言えない?』
アキラ『おう。ごめんな。俺のせいで。』
あずさ『いいよ。一緒に練習しよ!』
アキラ『俺、本当に情けないな。台詞も言えないのに、俳優になりたいだなんて。』
あずさ『そ、そんなことないよ!アキラは、感受性が豊かで台詞にも感情が伝わってくる。必ず人気俳優になれるはずだよ。』
アキラ『…あずさ、ありがとう。俺が人気俳優になっても側にいてくれる?』
あずさ『え?それって私に告白してるの?』
アキラ『そうだよ。俺と付き合ってほしい。』
アキラ『うん。』
ルイが立ち上がった。それを見て、私も立ち上がる。
そして、彼は、私を抱き寄せた。
「はい。そこまで。」
監督が止める声がしたが、彼は、しばらく動かない。
「ルイ?」
私は、彼の耳元で彼の名前を呼んだ。
すると、彼は、耳元で囁くように、
「僕と付き合い始めたきっかけ、思い出してくれた?」
そう言ったのだ。
「おい!るい、もうカットかかってるぞ。」
「あ、す、すいません。役に入り込みすぎてカットかかってるの気づいていませんでした。」
「さすがルイだなぁ。まだ本読みの段階なのに、しっかりアキラの役が入ってた。素晴らしかったよ。」
監督がルイの肩を叩く。
そしてスタジオ内にいたスタッフたちが次々と拍手する。
「さすが、ルイくん。」
「ですね。なんか引き込まれました。」
「ルイくん、素敵。」
ヘアメイクさんたちもルイのその様子を見て、彼の魅力に虜になっていた。
だがその中に冷静な女性スタッフがいた。
いつも彼の衣装を担当しているスタイリストの山田さんだ。
「にしても、ルイくん、珍しいね。」
「珍しい?」
うちの鬼頭が聞き返す。
すると、小笠原さんが
「ルイくん、本読みの時は、いつも基本読むだけっていうか、こんなに感情込めて読んでるのはじめて見たんだよね。」
と答えた。
「それにカットかかってるのにも気づかないなんてさ。基本失敗とかNGを出してるのを見たことないです。」
「そ、そうなんだ。」
「ていうか、リサちゃん、大丈夫?なんかすごいボーッとしてるけど。」
小笠原さんが遠くにいる私の様子に気づいた。
「え?ほんとだ。」
鬼頭が慌てて、私の元へ駆け寄った。
「リサ!リサ、大丈夫?」
マネが私の目の前で手のひらを揺らす。
「あ!うん。大丈夫。ちょっと久しぶりの本読みで疲れたみたい。」
「そうか。無理しすぎないでね。」
「うん。私ちょっとお手洗い行ってくるね。」
そう言って私は、お手洗いまで歩いて行った。
だが私の足元がおぼつかない。
なぜかと言うと、
先程ルイが耳元で囁いた言葉が気になって仕方がないからだ。
さっきのは、何だったんだろう?
アキラとしての言葉なの?
それともるいとしての言葉?
私たちが付き合いだしたきっかけ、思い出したかって?
そんなの思い出したに決まっているじゃない。
だって…
アキラとあずさが付き合った理由が私とるいが付き合ったきっかけと全く同じだったから。
5年前、届かぬ想いという少女漫画原作の実写映画で共演したことがきっかけで私たちは、出会った。
「すみません。リサさん。何度もNGを出してしまって…」
「全然いいよ!演技はじめてなんでしょ?」
「はい…」
「私なんてはじめての時、もっと緊張してたよ?」
「そ、そうなんですか?」
私と彼が初めて共演した時、彼はアイドルデビュー前の練習生でこの作品が俳優デビュー作だった。
なんでも純粋にアドバイスを求めてくれるところが可愛いなぁと思っていた。
今考えるとこの時から彼のことが好きだったんだと思う。
「リサさん、悩み事があるんですけど、聞いてくれます?」
「もちろん!なんでも聞いて!」
「実は、僕芸能界辞めようかなと思っていて…」
「え?!?」
私は、衝撃のあまり、スタジオ内に響き渡る程の大声を出していた。
「ちょ、リサさん声デカいです!!!」
彼が私の口元を抑える。
不覚にもキュンとしてしまったのを覚えている。
乱れた鼓動を抑え、訳を聞くことにした。
「なんでやめるの?」
すると、彼は、侍のように膝の上に拳を置きながら、話し始めた。
「あの…僕今年で20なんですけど、まだCDデビューできていなくて。これ以上練習生を続けてもデビューできるか分からないですし…諦めるのもアリなのかなって思いはじめたんです。」
彼は、今にも泣き出しそうなそんな表情を浮かべていた。
本当は、まだ辞めたくない、諦めたくない想いと、
そろそろ次のステージに踏み出した方が良いのではないか、
この2つの想いが彼を苦しめているのだと感じた。
そんな苦しそうな彼を見た私は、
「ぜ、絶対辞めない方がいいよ!…」
私は、気づくと、そう口にしていた。
ルイの台詞には、本当の感情がこもってる。
彼の目の演技にいつも圧倒されて、声に揺さぶられて、私もるいの台詞に乗っかるように演技することができるのだ。
それだけじゃなくて彼には華があるし、人々を魅了する魅力がある。
だからアイドルとしても人気者になれる。
だから諦めるなんて勿体無い。
私だけではなく、この場にいるスタッフ、ファンの皆が思っていたことだと思う。
私は、一息でそんな想いの全てをぶつけた。
すると彼は、
「ははは。ふはははは。」
彼は、自分の膝を叩きながら大笑いしていた。
「ちょっと!なんで笑うの?こっちは、真剣に話してるのにさ?」
不貞腐れる私。
「あ、ごめんなさい。勢いが、凄くて、圧倒されてしまって。」
「あっ…ごめん…言いすぎた。…でもるいの人生だもんね。ごめん。押し付けすぎた。」
「いや。ありがとうございます。そんな風に思ってくれていて嬉しいです。僕頑張れそうです。」
先程まで目の中に光を感じなかった彼だったが、ようやく普段のキラキラした目に戻っていた。
「あっそう?良かった。」
私は、どうにか彼の引退を阻止することができ、安堵しすぎていたのかもしれない。
次の瞬間、彼は、衝撃的な一言を口にする。
「リサさん…
撮影が終わっても…
デビューしても…
ぼ、僕と一緒にいてくれますか?」
「え?それってどういう意味?」
私は、あまりの衝撃で時が止まった気がした。
「リサさんってもしかして天然なんですか?」
また彼が私をからかいながら、自分の膝を叩いた。
「ちょっと!馬鹿にしないでよ?」
頬を膨らましながら拗ねる私。
「ハハハ。冗談ですよ?」
そう言いながら、彼の表情は、徐々に再び真剣なものへと変わっていく。
「リサさん、僕と付き合ってください。」
彼は、私の前に跪き、右手を私の目の前に差し出した。
「は、はい。」
「本当ですか?」
「うん。」
「あああ良かったぁぁぁ。断られたらどうしようかと思ったぁぁぁ。」
両肘と頭を床につけながら、大声で叫ぶ彼。
その姿は、まるで、オリンピックで金メダルを獲得した選手のようだった。
彼が勢いよく、私を引き寄せた。
彼の鼓動を感じる。
彼の吐息を感じる。
私の鼓動が彼に聞こえているのではないか、
そんなことが気になった。
「リサちゃん。僕が一生リサちゃんを幸せにするから。」
「うん。私も一生ルイについていく。」
こうして私たちは、付き合うことになったのだ。
題名は、〈僕が伝えたい君への想い〉。
高校生の同級生だったアキラとあずさは、文化祭の劇で主演とヒロインを演じたことがきっかけで付き合うこととなる。
「よーい、アクション。」
あずさ『アキラ、大丈夫?台詞上手く言えない?』
アキラ『おう。ごめんな。俺のせいで。』
あずさ『いいよ。一緒に練習しよ!』
アキラ『俺、本当に情けないな。台詞も言えないのに、俳優になりたいだなんて。』
あずさ『そ、そんなことないよ!アキラは、感受性が豊かで台詞にも感情が伝わってくる。必ず人気俳優になれるはずだよ。』
アキラ『…あずさ、ありがとう。俺が人気俳優になっても側にいてくれる?』
あずさ『え?それって私に告白してるの?』
アキラ『そうだよ。俺と付き合ってほしい。』
アキラ『うん。』
ルイが立ち上がった。それを見て、私も立ち上がる。
そして、彼は、私を抱き寄せた。
「はい。そこまで。」
監督が止める声がしたが、彼は、しばらく動かない。
「ルイ?」
私は、彼の耳元で彼の名前を呼んだ。
すると、彼は、耳元で囁くように、
「僕と付き合い始めたきっかけ、思い出してくれた?」
そう言ったのだ。
「おい!るい、もうカットかかってるぞ。」
「あ、す、すいません。役に入り込みすぎてカットかかってるの気づいていませんでした。」
「さすがルイだなぁ。まだ本読みの段階なのに、しっかりアキラの役が入ってた。素晴らしかったよ。」
監督がルイの肩を叩く。
そしてスタジオ内にいたスタッフたちが次々と拍手する。
「さすが、ルイくん。」
「ですね。なんか引き込まれました。」
「ルイくん、素敵。」
ヘアメイクさんたちもルイのその様子を見て、彼の魅力に虜になっていた。
だがその中に冷静な女性スタッフがいた。
いつも彼の衣装を担当しているスタイリストの山田さんだ。
「にしても、ルイくん、珍しいね。」
「珍しい?」
うちの鬼頭が聞き返す。
すると、小笠原さんが
「ルイくん、本読みの時は、いつも基本読むだけっていうか、こんなに感情込めて読んでるのはじめて見たんだよね。」
と答えた。
「それにカットかかってるのにも気づかないなんてさ。基本失敗とかNGを出してるのを見たことないです。」
「そ、そうなんだ。」
「ていうか、リサちゃん、大丈夫?なんかすごいボーッとしてるけど。」
小笠原さんが遠くにいる私の様子に気づいた。
「え?ほんとだ。」
鬼頭が慌てて、私の元へ駆け寄った。
「リサ!リサ、大丈夫?」
マネが私の目の前で手のひらを揺らす。
「あ!うん。大丈夫。ちょっと久しぶりの本読みで疲れたみたい。」
「そうか。無理しすぎないでね。」
「うん。私ちょっとお手洗い行ってくるね。」
そう言って私は、お手洗いまで歩いて行った。
だが私の足元がおぼつかない。
なぜかと言うと、
先程ルイが耳元で囁いた言葉が気になって仕方がないからだ。
さっきのは、何だったんだろう?
アキラとしての言葉なの?
それともるいとしての言葉?
私たちが付き合いだしたきっかけ、思い出したかって?
そんなの思い出したに決まっているじゃない。
だって…
アキラとあずさが付き合った理由が私とるいが付き合ったきっかけと全く同じだったから。
5年前、届かぬ想いという少女漫画原作の実写映画で共演したことがきっかけで私たちは、出会った。
「すみません。リサさん。何度もNGを出してしまって…」
「全然いいよ!演技はじめてなんでしょ?」
「はい…」
「私なんてはじめての時、もっと緊張してたよ?」
「そ、そうなんですか?」
私と彼が初めて共演した時、彼はアイドルデビュー前の練習生でこの作品が俳優デビュー作だった。
なんでも純粋にアドバイスを求めてくれるところが可愛いなぁと思っていた。
今考えるとこの時から彼のことが好きだったんだと思う。
「リサさん、悩み事があるんですけど、聞いてくれます?」
「もちろん!なんでも聞いて!」
「実は、僕芸能界辞めようかなと思っていて…」
「え?!?」
私は、衝撃のあまり、スタジオ内に響き渡る程の大声を出していた。
「ちょ、リサさん声デカいです!!!」
彼が私の口元を抑える。
不覚にもキュンとしてしまったのを覚えている。
乱れた鼓動を抑え、訳を聞くことにした。
「なんでやめるの?」
すると、彼は、侍のように膝の上に拳を置きながら、話し始めた。
「あの…僕今年で20なんですけど、まだCDデビューできていなくて。これ以上練習生を続けてもデビューできるか分からないですし…諦めるのもアリなのかなって思いはじめたんです。」
彼は、今にも泣き出しそうなそんな表情を浮かべていた。
本当は、まだ辞めたくない、諦めたくない想いと、
そろそろ次のステージに踏み出した方が良いのではないか、
この2つの想いが彼を苦しめているのだと感じた。
そんな苦しそうな彼を見た私は、
「ぜ、絶対辞めない方がいいよ!…」
私は、気づくと、そう口にしていた。
ルイの台詞には、本当の感情がこもってる。
彼の目の演技にいつも圧倒されて、声に揺さぶられて、私もるいの台詞に乗っかるように演技することができるのだ。
それだけじゃなくて彼には華があるし、人々を魅了する魅力がある。
だからアイドルとしても人気者になれる。
だから諦めるなんて勿体無い。
私だけではなく、この場にいるスタッフ、ファンの皆が思っていたことだと思う。
私は、一息でそんな想いの全てをぶつけた。
すると彼は、
「ははは。ふはははは。」
彼は、自分の膝を叩きながら大笑いしていた。
「ちょっと!なんで笑うの?こっちは、真剣に話してるのにさ?」
不貞腐れる私。
「あ、ごめんなさい。勢いが、凄くて、圧倒されてしまって。」
「あっ…ごめん…言いすぎた。…でもるいの人生だもんね。ごめん。押し付けすぎた。」
「いや。ありがとうございます。そんな風に思ってくれていて嬉しいです。僕頑張れそうです。」
先程まで目の中に光を感じなかった彼だったが、ようやく普段のキラキラした目に戻っていた。
「あっそう?良かった。」
私は、どうにか彼の引退を阻止することができ、安堵しすぎていたのかもしれない。
次の瞬間、彼は、衝撃的な一言を口にする。
「リサさん…
撮影が終わっても…
デビューしても…
ぼ、僕と一緒にいてくれますか?」
「え?それってどういう意味?」
私は、あまりの衝撃で時が止まった気がした。
「リサさんってもしかして天然なんですか?」
また彼が私をからかいながら、自分の膝を叩いた。
「ちょっと!馬鹿にしないでよ?」
頬を膨らましながら拗ねる私。
「ハハハ。冗談ですよ?」
そう言いながら、彼の表情は、徐々に再び真剣なものへと変わっていく。
「リサさん、僕と付き合ってください。」
彼は、私の前に跪き、右手を私の目の前に差し出した。
「は、はい。」
「本当ですか?」
「うん。」
「あああ良かったぁぁぁ。断られたらどうしようかと思ったぁぁぁ。」
両肘と頭を床につけながら、大声で叫ぶ彼。
その姿は、まるで、オリンピックで金メダルを獲得した選手のようだった。
彼が勢いよく、私を引き寄せた。
彼の鼓動を感じる。
彼の吐息を感じる。
私の鼓動が彼に聞こえているのではないか、
そんなことが気になった。
「リサちゃん。僕が一生リサちゃんを幸せにするから。」
「うん。私も一生ルイについていく。」
こうして私たちは、付き合うことになったのだ。