空旅
 忘れたことがない。

 いや、忘れられない。



 突然島が放火して、真っ赤に揺らいだ。

 飛行機の中で、ひたすらに涙を流すことしかできない無力な自分を叱りつけた。

 どうしてアイツを残してしまったんだ。

 どうして放火することに気が付かなかったんだ。

 と、何度も何度も。

 自分のせいじゃないのに、それでも殺められた命に代わりなんてものはなく。

 自分のせいじゃなくても、もう亡き命を前にすると自分に怒りが湧いてきて。

 久しぶりに遊びに来て、楽しくしていたあの日々はどこかに消え去った。

 いつの間にか悲しいことばかりの連発になって、いつこの現実から立ち上がれるか分からない。

 きっと、ずっと先になってしまうだろう。

 君にもう会えないと思うとやっぱり辛くて。

 きっと忘れることは無いし、忘れられる自身もない。



 今までありがとう、なんて言えなかった。



 そんな心の余裕がなくて、足許がふらふらして、座っていて力が入らなくて。
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