僕と彼女と傷痕
「ほーんと、意外!」
呂麻が、玄匠を見て言った。

「何が?」
「御清水が、そんな尽くす人だなんて思わなかったってこと」

「そうかな?」

「私も思う。
いつも、どっか冷めた目で見てたじゃん!
呂麻と菅井くんのこと」
里莉も口を揃えて言った。

「あ、そうかも?
よく、同棲とかできるなって思ってた」

「フッ…ゲンは、散々な目に会ってきたからな(笑)」
武公が笑って言った。

「まぁね…」

「「散々な目?」」
里莉と呂麻が、不思議そうに見た。

「ほら。こいつって金持ちのボンボンだし、イケメンだし、高校ん時からモテてさ!
色んな女が、寄ってきてた。
付き合ったら付き合ったらで、ステータスみたいに扱ってさ」

「へぇ…」
「そうなんだ…」

「そんな目にあってたら、冷めると思わね?」

「「確かに…」」



それから━━━━━━

ベランダで煙草を吸っている武公の元に、玄匠が来る。
「ん?みふぶちゃんは?」
「ソファで寝てる」
そう言って、玄匠も煙草を出した。

「ん!」
武公が、火をつける。
「ありがと」

「………」
「………」
二人の煙草の煙を吐く音だけが、響くベランダ。

「……………お前さぁー」
空を見上げたまま、ポツリと武公が言った。

「ん?」
「本当は、どっちなの?」

「は?」
「同情?愛情?」

「9:1」
「は?どっちがどっち?」

「愛情が9」
「あーね」

「何なの?」
「呂麻がさ。
同情で、風吹の傍にいて欲しくないって言うから。
呂麻、心配してんだよ、みふぶちゃんのこと。
呂麻とさとちゃんは、まだお前を許してないから」

「うん。わかってる」

「呂麻、言ってたよ」
「ん?」

「何でもないフリをしてるけど、風吹はいつも大変そうだって!
職場でフォローはしてるけど(呂麻は同じ職場のウェイトレス)ずっと私が傍にいれるわけじゃないからって。
“御清水のせいで”何で、こんな良い子がこんな大変な思いをしなきゃなんないの!ってさ」

「うん」

「みふぶちゃん、夢があるんだろ?」

「え?」

「ん?みふぶちゃんの夢」

「夢?」

「は?ゲン、知らねぇの?」


「知らない…」


信じられない思いで、武公が見ていた。
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