僕と彼女と傷痕
「━━━━━お疲れ様でした!」
「風吹、お疲れ!」
「呂麻ちゃん!
待っててくれたの?」

「お茶でもどう?」
「うん!」

風吹は、仕事終わりに呂麻と職場のカフェでお茶することにした。

「新メニューの方はどうなった?」
「うん…まだ、返事してない……」

風吹は、店長にデザートの新メニューの開発に参加しないかと声をかけられていた。

「御清水には相談したの?」
「まだ」

「え?なんで?」
「うーん…玄匠くん、忙しそうだし。
社長さんだもん。忙しいよ!」

「でも“ある意味”婚約者みたいなもんでしょ?二人」
「え!?/////」

「あ、赤くなった(笑)」
「も、もう!からかわないで!!」

「タケが言ってたわよ?
あの二人は、このまま近い内結婚するって!
ダブル結婚式でも提案する?ってさ(笑)」

「な、なんか…菅井くん、占い師みたい(笑)」

「フフ…
まぁ、でも。
一緒に住んでるんだから、相談したら?
御清水、喜んで相談に乗るんじゃない?」
「そうかな?」
「そう思う!」


それからも楽しく話をして二人が外に出ると……

「あれ?
社長の彼女だ!」
スーツの男性に声をかけられた。

「え?」
「御清水社長の彼女さんっすよね?」

「玄匠くんの……」
「そこの社員です!」

「あ!こんにちは。
彼が、お世話になってます!」
ペコリと頭を下げる、風吹。

「いやいや、こちらこそ!
やっぱ、可愛い!
な?そう思わね?」
そこには、大貫もいて男性は大貫に言った。

「そうですね!」
大貫はニコッと笑う。
そして、大貫は風吹を見て気づく。

「彼女さん、それ……」
「え?」

「耳…」
「あ、補聴器です。
私、耳が聞こえなくて……」

「そうなんすか?」
「はい」

「じゃあ、噂は本当なんだぁー」
大貫が少し声を張り上げ言った。

「え?」

「社長が、彼女さんを怪我させてその償いで付き合ってるって!」
「え……」

その場が凍ったように固まる。
それでも大貫は、得意そうに話を続けた。

「でも、彼女さんはそれで幸せなんですか?」

「え?」

「だって、本当に好かれてないのに付き合ってるなんて、悲しくないですか?」
「………」


「━━━━━━あんた、何様なの?」
そこに呂麻が、大貫を睨み付け言った。

「え?」

「本当に好かれてるかなんて、あんたにわかんの?
御清水がそう言ったの?
何にも、知らないくせに……!
……………あんたって、最低ね」

呂麻はそこまで言うと、風吹の手を引っ張りその場を去った。
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