僕と彼女と傷痕
「私の口からは………」

「てことは、ただの事故じゃないんだ?」

「え?」

「ふぶちゃんも、呂麻ちゃんも隠すってことは只事じゃないよね?
…………うーん…誰かが関わってる?とか?」

「━━━━━!!!?」

「やっぱり…」
呂麻の表情から、光弥は何かを察してしまう。
そして、続けて言った。

「ふぶちゃんらしいな。
誰かの為に、障害をおったんでしょ?
優しくて、控えめで、お人好しのふぶちゃんらしい。
じゃあ…あいつは、同情かなんかでふぶちゃんと付き合ってるの?
可哀想とか」

「それは違います!
私が、保証します!」

「そうかなー?」

「本当です!御清水には、ちゃんと確認しました!」

呂麻の真っ直ぐな目に、光弥は「そう…」と言って、コーヒーを口に含んだ。



そして、従業員出入口で風吹を待つ光弥。
風吹が出てくる。

「お疲れ、ふぶちゃん」
「あ、みっ…あ、違う!光弥くん!」

「え?何で?急に、光弥くん呼び?」
「あ…玄匠くんが、嫌がるから…」

「…………そう…
ねぇ、話したいことがあるんだ。少しいい?」



近くのベンチに座る。
「ねぇ、ふぶちゃんはさ」
「うん」

「本気なの?あのハイスペ御曹司のこと」

「うん!私が、告白したんだもん」

「なんで?
いつから、あいつのことを?」

「大学生になってからだよ」

「そっか…
ねぇ、なんで、俺じゃダメなの?」

「え………」

「店を持つ夢は、あいつと叶えるの?」

「…………その夢は、もういいの」

「は?なんで!?
何のために、あんなに沢山のノートを書き留めきたんだよ!?
将来、祥太朗みたいなスイーツ店作るって頑張ってたじゃん!」
光弥が、風吹の肩を持ち訴えかけるように言った。

「でも、この耳じゃ……」

「じゃあ、俺が一緒に夢叶えてやる!
ふぶちゃんが耳が聞こえなくても、それを俺がカバーすればいいわけだろ?
会社社長のあいつには無理だけど、俺ならできる!」

「光弥くん…」



「…………ねぇ、ふぶちゃん…
恋人にしてなんて言わない。
でも、ビジネスパートナーならいいだろ?」

風吹に頬に触れ、目を覗き込んで言った光弥。



風吹は、すぐに答えることができなかった。
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