僕と彼女と傷痕
玄匠の突然の告白に、風吹は戸惑う。

「御清水くん、責任感じなくていいから。
ほら、会社立ち上げたんでしょ?
私のことはいいから、会社のことを考えて?
立ち上げたばっかで大変でしょ?
…………てか、私達…もう、会わない方がいいね……!
御清水くんの、邪魔になっちゃう」


しかし玄匠は、ほぼ毎日風吹に会いに行った。

「━━━━━風吹、お疲れ様!」

「御清水くん…
毎日毎日、気を遣わないでって言ってるのに……」
風吹はカフェの厨房で働いていて、従業員出入口から出てきた風吹を玄匠が待っていた。

「でも、会いたかったし」

「それ、本心?」

「うん、もちろん!」

「御清水くん、私のこと好き?」

「うん、好き!」

「━━━━じゃあ、私のお願い聞いて?」

「うん!もちろん、いいよ!」

「私のこと、抱いて?」

「え━━━━」

「私のこと、好きなんでしょ?
できるよね?」


「…………いいよ」

二人は、玄匠のマンションへ向かった。



「━━━━━シャワー、浴びておいでよ」
「う、うん/////」

「あ!なんなら、一緒に浴びる?
身体、洗ってあげようか?」

「…//////」
真っ赤な顔が、更に赤くなる風吹。

「フフ…可愛いね!風吹って」


バスルームのドアを後ろ手に閉め、ずり落ちるようにへたりこんだ風吹。

こんなはずじゃなかった━━━━━

まさか“いいよ”なんて言われるなんて思わなかったのだ。
あの日から毎日迎えに来て、休みの日もデートに誘われる為、苦しくなったのだ。

好きな人を“責任”で縛り付けていることに……

だからヤケになり、いっそのこと、嫌われた方がいいのでは?と思ったのだ。

あんな言い方をすれば、さすがに退くだろうと思ったのだ。


「ど、どうしよう……」

風吹は、経験がない。
実は“抱いて?”と言った時も、心臓はバクバクしていたのだ。

いや、待てよ。
“初めて”って言ったら、退くかな?

「と、とりあえず…シャワーを……」



一方の玄匠。

「まさか“抱いて?”って言われるとはなぁ……」
ミネラルウォーターをグッと一気飲みして、呟いた。

別に……いや、全く嫌じゃない。
ただ、本当に驚いただけだ。

風吹が望むなら、何でもする。


「…………それにしても、遅いな…」


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