僕と彼女と傷痕
玄匠は、バスルームへ行き脱衣室に入る。

シャワーの音が、スモークの入ったガラスのドア越しに響いていて、ドアをコンコンと叩く。
「風吹ー、大丈夫ー?」

そこまで言って、気づく。
「あ、聞こえないんだった……」

籠の中の補聴器を見て、呟いた。

「ほんと、大丈夫かな?」

倒れてないよね?
シャワーの音だけで、よく見ると影が動いていない。

「え?風吹?」

玄匠は、胸騒ぎがしてバン!とドアを開けた。
その瞬間、風吹がびっくりしたようにドアを見た。

目を見開く、風吹。
玄匠は、風吹を抱き締めた。

シャワーが、玄匠にかかる。
腕の中で、風吹がもがいているのがわかる。

玄匠は風吹の頬を両手で包み込み、ゆっくり口を開いた。
「だ、い、じょーぶ?」

口の動きを見ていた風吹は、何度も縦に首を振った。
「良かったぁ……」

呟いた玄匠は、バスタオルを取り風吹の身体に巻いた。
そして、抱き上げた。

びっくりした風吹が、じたばたともがく。
「じっ、と、し、て!」
また大きく口を開けて言い、ベッドに連れていきゆっくり下ろした。

玄匠は濡れた服を脱ぎ、下着姿になると風吹を組み敷いた。
風吹の頬に触れる。

「な、ん、か、ふ、あ、ん、だ、か、ら」
そのまま、口唇をなぞった。

「こ、の、ま、ま。
だ、く、ね」

そして、口唇を奪うように重ねた。
「んー!!」

風吹が、玄匠を押し返す。
口唇を話した玄匠が、風吹の顔を覗き込み言う。

「なー、に?」

「わぁー、たー、いぃー、はじぃーめ、てー」
(私、初めて)

ゆっくり、玄匠に伝える風吹。

そんな風吹に、玄匠は微笑んだ。
風吹の目が見開かれる。

「や、さ、し、く、すー、る、よ!」

風吹の手に指を絡めて繋ぎ、風吹の首に吸い付いた。



「━━━━━はい!」
ぐったりしている風吹を優しく起こし、補聴器を渡した玄匠。

受け取った風吹が右耳につけると、頭をポンポンと撫でた玄匠。
「身体、大丈夫?」
「うん…」

「良かった…」
風吹が頷くと、呟いて額にキスをした玄匠。

「……/////」
「ねぇ、風吹」

「え?」
「身体、許してくれたってことは、僕達、付き合ってるってことでいいんだよね?」

「え……!?」
「え?って、違うの?
てか、風吹はそんな軽い女じゃないでしょ?」

「そ、それは…」
「言っておくけど!」
「え?」


「僕、諦めないからね!」
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