SF&ホラーショートショート選①/神様、なんでワタシなのよ‼
ニンゲンの涙…
「…これで完了だな。あとは、このオンナを変体させれば文字通り人類は絶滅になる…」
「相棒…、オレの意見言っていいか?」
「ああ、忌憚なく言ってくれ」
「もうしばらく、今までのニンゲン世界を観察したらどうかな?」
「と言うことは、今オンしたこのオンナを除く変体をリセットするということか?」
「ああ。気が遠くなるほどの時を費やして、実態を持てない我々ウィルスがついにニンゲンを乗っ取れたんだ。こうとなれば、奴らに代わって我々がこの地球を管理していきたい。ずっとそう思ってはきたが…」
「お前、ニンゲンの姿が最後の一体となって、この世から人間の姿をなくすのに、ためらいを感じてるんだな?」
「ためあいなのかどうかは微妙だが、今まで例えようもないほどグロテスクに見えていた人間の姿だったが、今このオンナの目から流れ出たモノが、一瞬、美しく見えたんだ」
「…」
「いくら目を覆うような醜悪で愚かなニンゲンでも、このまま消え去るには惜しい気もなくはない」
「なら、一旦リセットで、元に戻すか?今なら、さほどギャップを残すことなく、これまでのニンゲン世界へはめ込むことはできる。その権限もオレとお前にあるしな」
「お前の方は、どう考えてるんだ?」
「うむ…。ニンゲンはどうしようもない生き物で、ほっとけば、この地球という星ごと、奴らは時期に滅ぶよ。だが、どうせなら突っぴょうしもない行いでこの星の全生命を振り回してきた奴らが、どんな顛末を産み落とすかってのに興味はあるな」
「要は、ニンゲンからニンゲンであることを奪う準備は整ったんだし、どうしようもない愚かな結末を本当に迎えるギリギリのところまでは見届けようってことでいいのか?」
「ふふふ…、じゃあ、我々は自分勝手でさもしい限りのニンゲン世界にとって、神だな」
「そういうこと。さあ、方針が決まったんなら、このオンナが目覚める前にコイツ以外の全人類を元にリセットだ」
「わかった…」
かくして、碧き生命の星、地球は20××年12月2日の朝を迎えた…。
***
「…ママ~、行ってきまーす❣」
「行ってらっしゃい~。気を付けてねー♡」
「は~い」
”よかった…❣❣夕べ、変な夢を見たけど、結局12歳の時に聞いた声は神様じゃなかったんだし♪このささやかな幸せは手放さないわ!絶対に…”
何とも無垢な笑顔を漏らしながら、どこかまなじりを決したかのような晴れやかな表情で、M美はそう自らの胸に言い聞かせていた。
愛しい長男の集団登校を見送る彼女は、昨日となんら違わぬ、ごく平凡な主婦であり一児の母親ではあった。
しかし…、紛れもなく、人類の絶滅はどこにでもいる一人の女性から湧き出たニンゲンの涙が救ったのである。
FIN♥
「相棒…、オレの意見言っていいか?」
「ああ、忌憚なく言ってくれ」
「もうしばらく、今までのニンゲン世界を観察したらどうかな?」
「と言うことは、今オンしたこのオンナを除く変体をリセットするということか?」
「ああ。気が遠くなるほどの時を費やして、実態を持てない我々ウィルスがついにニンゲンを乗っ取れたんだ。こうとなれば、奴らに代わって我々がこの地球を管理していきたい。ずっとそう思ってはきたが…」
「お前、ニンゲンの姿が最後の一体となって、この世から人間の姿をなくすのに、ためらいを感じてるんだな?」
「ためあいなのかどうかは微妙だが、今まで例えようもないほどグロテスクに見えていた人間の姿だったが、今このオンナの目から流れ出たモノが、一瞬、美しく見えたんだ」
「…」
「いくら目を覆うような醜悪で愚かなニンゲンでも、このまま消え去るには惜しい気もなくはない」
「なら、一旦リセットで、元に戻すか?今なら、さほどギャップを残すことなく、これまでのニンゲン世界へはめ込むことはできる。その権限もオレとお前にあるしな」
「お前の方は、どう考えてるんだ?」
「うむ…。ニンゲンはどうしようもない生き物で、ほっとけば、この地球という星ごと、奴らは時期に滅ぶよ。だが、どうせなら突っぴょうしもない行いでこの星の全生命を振り回してきた奴らが、どんな顛末を産み落とすかってのに興味はあるな」
「要は、ニンゲンからニンゲンであることを奪う準備は整ったんだし、どうしようもない愚かな結末を本当に迎えるギリギリのところまでは見届けようってことでいいのか?」
「ふふふ…、じゃあ、我々は自分勝手でさもしい限りのニンゲン世界にとって、神だな」
「そういうこと。さあ、方針が決まったんなら、このオンナが目覚める前にコイツ以外の全人類を元にリセットだ」
「わかった…」
かくして、碧き生命の星、地球は20××年12月2日の朝を迎えた…。
***
「…ママ~、行ってきまーす❣」
「行ってらっしゃい~。気を付けてねー♡」
「は~い」
”よかった…❣❣夕べ、変な夢を見たけど、結局12歳の時に聞いた声は神様じゃなかったんだし♪このささやかな幸せは手放さないわ!絶対に…”
何とも無垢な笑顔を漏らしながら、どこかまなじりを決したかのような晴れやかな表情で、M美はそう自らの胸に言い聞かせていた。
愛しい長男の集団登校を見送る彼女は、昨日となんら違わぬ、ごく平凡な主婦であり一児の母親ではあった。
しかし…、紛れもなく、人類の絶滅はどこにでもいる一人の女性から湧き出たニンゲンの涙が救ったのである。
FIN♥