神さま…幸せになりたい

未来へ

籍を入れてから1ヶ月が経った。今日、私達は亘くんの実家に寄ってからシンガポールに行く。

亘くんはここ2週間はシンガポールに行ったり来たりの生活をしていた。向こうの病院などの手続きも終わり、日本で3人の生活が始まる。その前に約束していたシンガポールの旅行に行くことになったのだ。

「沙代子さん、あやちゃん行ってきます」

「楽しんでらっしゃい」
「詩織ちゃんお土産待ってるね〜」

2人に見送られ新千歳空港までやってきた。目指すは羽田空港まで、望夢の初フライトはドキドキだったが泣かずにスヤスヤと寝てくれた。

空港まで亘くんのご両親が迎えにきてくれた。
「詩織ちゃん、色々ごめんなさいね。辛かったし、大変だったでしょ」亘くんのお母さんに抱きしめられた。久しぶりに会った叔母さんは少し痩せたように感じた。

今後は札幌で3人で暮らすことを話をした。
もしかしたら反対されるかも…と多少の不安があったが、3人が幸せになるなら、どこで暮らしてもいいのよ。と言ってくれて安心した。

望夢は初めて見る大きな家と、叔母さんの心の穴を埋める為に飼い始めたという保護犬の「はなちゃん」に興味深々、はなちゃんはおとなしい犬で、望夢が尻尾をギュッと掴んでも吠えたり噛みついたりしなかった。本物の犬に触れ合ったことがない望夢に、お義父さんは優しく撫で方を教えてくれた。

私が亘くんに何も言わずに札幌に行ったことも、望夢を1人で産んで育ててたことも知っているのに、私を労わる言葉しか言わないご両親には感謝してもしきれない。

実家だと休めないだろうからとわざわざホテルを取ってくれた亘くん。私は実家で過ごしてもいいと思ってたが、亘くんは実家だとお手伝いさんもいるし、私が気を使うと思ったらしい。

生まれてからずっといた街なのに、どこか新鮮で不思議な感覚だった。今の私は札幌が自分の居場所だと…

お義父さんに空港まで送ってもらっていよいよ私達はシンガポールに出発する。
望夢が寝てくれるのを期待して夜の便にした。しかも長いフライトだからと亘くんはビジネスクラスを予約してくれた。時差も1時間なので時差ボケにならなくてもいいのが楽だ。私も久しぶりの海外&ビジネスなんて初めてなので、これが新婚旅行というのも忘れウキウキしっぱなしだった。
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