神さま…幸せになりたい
「大丈夫だったか?」
トイレから出ると亘くんが待っていてくれた。

「ごめん、ごめん。転んじゃって…望夢、次どこ行こうか?きりんさん見に行こうか」
亘くんが持っていたベビーカーのハンドルを持とうとして手を掴まれた。

「詩織?どうした?何があった教えて?」

「何にも、何にもないから」
泣かないように笑顔を作った。

「詩織、俺たち夫婦だよね。ちゃんと言ってくれないとわからないよ。どうしてそんな泣きそう顔で…ってか泣いたの?なんで?」
握ってた手を強く握られた。
言ってもいいのだろうか?
引かれたりしないかな?
そう思った時、急に抱きしめられた。

「もしかしたら詩織は何か勘違いしてるんじゃないか?俺がここに来たことがあるんじゃないかって」

「えっ」思わず亘くんの顔を見上げた。

「やっぱり…あのね詩織、俺はずっと詩織を思ってた。嘘じゃない。詩織を探して、でも見つからなくて…そんな状態なのに他の人と付き合えるほど俺は器用じゃない。ずっと1人だったよ。ここの動物園に詩織が望夢を連れて行きたいって言われた日からネットや職場の人に聞いて情報を集めた。どうやったら詩織が喜んでくれるか、どうやったら家族3人で思い出が作れるか必死だったよ。だって現地に住んでたのに知らないの?なんて詩織に言われたくなかったから…でもそれで詩織が疑って、悲しい思いをさせるなんて思わなかったよ。ごめんな?」

「ううん…亘くん…グスッごめんなさい。亘くんが誰かと来たことあるんじゃないかって…私からいなくなったのに、そんなこと言う資格ないのに、誰か他に好きな人がいたんじゃないかって思ってた」

「詩織以外、俺は誰も好きじゃなかったよ。本当だから、きっと詩織にあのまま会えなくても俺は詩織を思ってずっと1人だったと思うよ。だから詩織、なんでも聞いて、ちゃんと答えるから、勝手に1人で考えて辛い思いや悲しい思いをさせたくないから。詩織だけを愛してるから」
誓いの口づけのように唇が重なった。

色んな思いをして生きてきた。辛いことも苦しいことも。でもこれからは家族3人で幸せになれるように生きていく。

亘くんだけを愛してる。これからもずっと…
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