王女✖️護衛の禁断の恋〜私を憎んでいる彼を愛してしまいました
ep3
部屋から出ると、今一番会いたくない彼が立っていた。
私は、目を逸らし、逃げるようにしてこの場を立ち去ろうとした。
「へヨン様、お待ちください。」
「あなたなんて知らないわ。」
そんな私の様子を見て、彼は、尋ねてきた。
「ご結婚のこと、殿下からお聞きになったのですか?」
「そうよ。私が結婚を嫌がっていたこと、知ってるじゃない?なのになんで賛成したの?」
私は、彼への怒りから問いただすように尋ねた。
「トリカブト王国の侵略を止めるには、そうするしかなかったんです。」
「そんなことわかっているわ。」
私は、強めに彼を牽制した。
「それにへヨン様は、このカルミヤで苦労されて来たのを僕は、知っています。トリカブト王国の皇太子であるトア様は、お優しい方だと聞きます。へヨン様も今よりも幸せに暮らすことができると思います。」
ジェヒョンは、私がこの地で苦労したことを知っている。
でもね、ジェヒョン。
私もうこの地は、そんなに嫌ではないの。
あなたと出会った頃、私は、この地が大嫌いだった。
父上も母上も弟も皆大嫌いだった。
でもあなたと出会ってからこの土地が大好きになったの。
あなたが存在するこの地が。
そんなことを思い出した私は、彼にこう言っていた。
「そうね。私も幸せになりたいからトリカブトに行くことにするよ。」
私がそう言うと、ジェヒョンは、ホッとしたような表情をしていた。
「僕もヘヨン様と一緒にトリカブト王国に着いていきます。僕は、いつでもヘヨン様のお側であなたの命をお守り致します。」
彼は、いつもこの言葉を私に言ってくる。
そう。
ジェヒョンは、父上と約束したから私の側にいてくれているだけ。
彼も私のことを愛してくれているのではないかと、錯覚してしまう。
でも彼は、私のことを憎んでいるのだ。
目の奥がそう言っている。
でもそれでもいいの。
彼が側にいるだけでそれだけで幸せ。
だから私は、彼以外の人と結婚することになってもいいの。
彼が側にいてくれるなら。