小悪魔と仮面舞踏会

すると

「知りたい?」

試すような言い方で聞いてきた

俺は本心のまま素直に

大きく首を縦に動かし頷く。

そんな俺を見て

力なく小さく笑うと

「しょうがないわね。」

そう言って

一呼吸置いて話し出した

「中学の卒業式の日に、実瑚…私の秘密暴露したの。クラス全員の前で。マイクまでわざわざ用意して。」

『えっ?』

「私も驚いた…異常だって思った。普通ここまでする?って…。私のこと色々調べまくって知ったらしいの。だから私の秘密を知ってるの…」

松山から話したんじゃなかったんだな。

「私や宮沢とは違って実瑚は金持ちでしょ?だから私の情報なんて簡単に調べ上げたりできるわけ。」

そうか…。

俺や松山みたいな普通の生活を送ってる奴の情報は

金持ちの牧原にとっちゃ安易に手に入れることができる情報なんだ。

「クラス全員の前でマイク片手に私の秘密暴露したんだけど、名前は出せなかったから、私のことだってみんなにはバレなかった。」

『なんで名前出せなかったんだ?』

「実瑚のお父さんが途中で止めに入ってくれたのよ。ホッとした。」

そうか…

牧原の親父さんがなぁ…。

『良かったじゃねぇか。自分のことだってみんなにバレなくて。』

「うん…でもそれ以前にお母さんとお父さんが卒業式途中で帰ったことに安心した。」

松山の横顔をチラッと見てみると

無表情な松山は居なかった。

そこには

思い出を語る柔らかい表情の松山が居た…。

< 496 / 511 >

この作品をシェア

pagetop