恋愛観測



「雨上がりの澄んだ空なら、きっと綺麗に見えるはず。だから、見に行こうよ!」

 電車に揺られて一時間半。学校を出たときはまだ黄金色だった風景も、今では漆黒に染まっている午後八時。

「大伊さんって行動派……」

 同じ県内だというのに、すこし移動しただけで、空の色が違うと、香子は確信する。
 ……本当の星を見たことないから、怖いなんて言うんだ。

「ここなら、きっと見えるよ」

 半ば強引に日雀を連れてきた香子、山の方なら空気も綺麗だろうと判断して、制服姿のまま山岳公園まで来てしまった。
 雨上がりの青臭さ。むせ返るような新緑の香り。公園の中に街灯は一つだけ。
 香子は街灯の影響がない場所まで歩き、方角を見極める。

 ……ムリして足掻く必要はないってヒガラくんはあたしに教えてくれた。だからあたしも彼に教えてあげなくちゃ……星はあたしたちを監視しているわけじゃないよ、だから怖くないよ、って。
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