恋愛観測
 肉眼でもくっきり、星たちの姿は見える。空を見上げて、うわっと声をあげる日雀。

「……すげ」

 星が、降っているかのよう。
 田舎の星空には及ばないけど、足を伸ばせば忘れていた風景を取り戻せる。香子は右手を天に掲げる。南の空。

「あれは、このあいだ屋上で見た北斗七星だね。ひしゃくの一番先っぽと、アルクトゥールス……うしかい座の中で一番輝いてる星、それからおとめ座のスピカ。この三つを点で結ぶと、春の大曲線になるんだよ」
「詳しいじゃないか」
「昔見た風景と、被ったから……」

 東の空には満ちていく半月。淡い黄色が、香子を郷愁に誘う。でも、帰りたいなんて思っていない。ただ、懐かしいなと感慨に耽っただけ。
 だって、隣には、日雀がいるから。

「星は優しいの。監視なんかしてないよ。怖くなんかないよ……だから、嫌いだなんて言わないで」

 星が嫌いだと口にしていた日雀。まるで自分のことを嫌いだと言われたみたいだった香子。地学室で声をかけられたときから気になっていた、太陽の黒点に夢中だった男の子。
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