一人三脚(いちにんさんきゃく)/SF&ホラーショートショート選②

先人がいた!

全身を身震いさせ、陶酔状態だったカレの目に飛び込んだモノ…

それは、限りなくグレーに侵食され、漆黒の地面に巌と記されたひとつの靴跡だった

ムツオの目視では、なぜかサイズ21.5に写ったその小さな足あと…

それをこの目で認めたカレに物語っていた、その靴跡からの口上はあきらかだった

”ココの開拓者はアンタじゃないよ。ボクだよ!残念でした~~”

ということだった


***


”は~~??ざけんなよー‼なんで、こんなトコにオレより先に誰かなんだよ!…やっと、人のできないコト、この年で成し遂げて、老々介護の両親にもオレようやく、できたよって…。長年発せなかったその言葉を、オヤジたちにかけてやれると思ったのに…‼”

ムツオはその小さな足あとを睨みつけるように、無言で愚痴っぽく叫んでいた

そんなムツオの言葉に、なんと靴跡は、”ニンゲンのコトバ”という響きでリターンした

”ボクの方が先だよ。知ってるくせに…。ふふふ…、わかってたくせに…”

最後の方は不気味なエコーがかかったそのニンゲンらしき声…

ムツオの耳には、幼い子供のそれで届いた

その数十秒後…

ムツオはすべてを悟るに至る




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