一人三脚(いちにんさんきゃく)/SF&ホラーショートショート選②
致命的な性(サガ)
ところが…、彼女との別れは実にあっけなった
”私、今でもあなたのこと、嫌いじゃない。優しくてマジメで…。でも、ムツオって自分に不誠実なとこがある。それ、ずっと見続けるのはしんどいのよ、私には。あなたのそういとこ、大丈夫な人と巡り合えることを願ってるわ”
アイコからの決別の言葉(ムツオにとってはダメ出し宣言)は、実にさらりとだった
かわいいえくぼが引き立つ笑顔を浮かべて…
そしてムツオ自身、彼女の指摘は丸ごと理解できたし、自覚もあった
***
自分に不誠実とは、自らを偽ること、しかるに自分を大切にできない生き方を己に押付けるということ…
その延長で、周囲にも嘘をつくこととなる
それは罪なことで、自分も周囲も幸せにしない方程式だと捉えてはいたのものの…、年を重ねても、ムツオはそこからどうしても自己を放てないでいた
そんな彼の性は、現実的には不利益を抱えるという顛末に収れんされた
具体的には金銭的な損を繰り返し、積み重ねるという負のサイクルだった
無理なことを無理と言えず、その場を繕いでしまい、自分で全部抱え込んでしまう…
アイコとの交際中も、財布の中身以上にお金を使い、クレジットの支払いが膨らみ、借金を重ねていったのだった
40歳を過ぎたころには母親が入院し、ここでも兄弟に治療費を押し付けらたりという具合だ
やがて勤務先のリストラ、再就職先でさらに手取りが減るといった状況下、金利の高い借金に手を出すという悪循環は年齢とともに加速する一方だった
そして、ついに気が付くと巧妙なシステム詐欺の片棒を担ぐ”アルバイト”に手を染め、50歳ちょうどで逮捕されるハメとなったのだ
***
”ヤツは…、あの21.5の靴跡は常に警告を続けてきたんだ。このままじゃ、ダメになる。不幸な道を究めることになるよと…”
そうであった
あの幼き日、校庭の花壇に刻んだ自分の足あとは、当時から何となく感じていた自分の致命的な性を克服する誓いを無意識に立てていたのだろう
だが、彼のそんな思いとは相反し、悲しいかな、そこからは呪縛しか生まれなったのかもしれない
”私、今でもあなたのこと、嫌いじゃない。優しくてマジメで…。でも、ムツオって自分に不誠実なとこがある。それ、ずっと見続けるのはしんどいのよ、私には。あなたのそういとこ、大丈夫な人と巡り合えることを願ってるわ”
アイコからの決別の言葉(ムツオにとってはダメ出し宣言)は、実にさらりとだった
かわいいえくぼが引き立つ笑顔を浮かべて…
そしてムツオ自身、彼女の指摘は丸ごと理解できたし、自覚もあった
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自分に不誠実とは、自らを偽ること、しかるに自分を大切にできない生き方を己に押付けるということ…
その延長で、周囲にも嘘をつくこととなる
それは罪なことで、自分も周囲も幸せにしない方程式だと捉えてはいたのものの…、年を重ねても、ムツオはそこからどうしても自己を放てないでいた
そんな彼の性は、現実的には不利益を抱えるという顛末に収れんされた
具体的には金銭的な損を繰り返し、積み重ねるという負のサイクルだった
無理なことを無理と言えず、その場を繕いでしまい、自分で全部抱え込んでしまう…
アイコとの交際中も、財布の中身以上にお金を使い、クレジットの支払いが膨らみ、借金を重ねていったのだった
40歳を過ぎたころには母親が入院し、ここでも兄弟に治療費を押し付けらたりという具合だ
やがて勤務先のリストラ、再就職先でさらに手取りが減るといった状況下、金利の高い借金に手を出すという悪循環は年齢とともに加速する一方だった
そして、ついに気が付くと巧妙なシステム詐欺の片棒を担ぐ”アルバイト”に手を染め、50歳ちょうどで逮捕されるハメとなったのだ
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”ヤツは…、あの21.5の靴跡は常に警告を続けてきたんだ。このままじゃ、ダメになる。不幸な道を究めることになるよと…”
そうであった
あの幼き日、校庭の花壇に刻んだ自分の足あとは、当時から何となく感じていた自分の致命的な性を克服する誓いを無意識に立てていたのだろう
だが、彼のそんな思いとは相反し、悲しいかな、そこからは呪縛しか生まれなったのかもしれない