桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「アレン!具合どう?熱は?」
 そう言いながら、額に手を当ててくる。

 「え?何のこと?熱なんてないよ」
 
 思わず美桜の手をよけると、何言ってるの!とまるで咎めるような口調の美桜にびっくりする。

 「うん、大丈夫ね。もうすっかり良くなったみたい」
 
 アレンの額から手を離して、美桜はほっとしたように微笑んだ。

 (いったい何がどうなってるんだ?)
 
 アレンの頭の中は、まだハテナでいっぱいだった。

 「はっ、み、美桜様!」
 
 急に声がしたかと思ったら、ソファの方からクレアがベッドに駆け寄ってきた。

 「申し訳ありません。私ったら、すっかり眠ってしまって」
 「ううん、大丈夫よ。ほら、アレンもすっかり良くなったみたい」
 「坊ちゃま!本当ですわね。はあ、良かった」
 
 アレンはわざと咳払いをすると、おそるおそる口を開いた。

 「あー、えっと、俺、どうしたんだっけ?なんでこの部屋で寝てるんだ?」
 「まあ、坊ちゃま!」
 
 驚いたようにクレアが目を見開く。

 「もしや、記憶喪失では…」
 「いや、単にあの時の状況を覚えてないだけなんじゃない?」
 苦笑いしながら美桜が言う。
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