桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 (ふう、ほっとするなあ)
 
 美桜は湯船に顔の下ぎりぎりまで浸かり、腕を伸ばした。
 
 まだ朝の五時。何をするにも早すぎるので、ひとまず部屋でゆっくりすることにした。

 (やっぱりお風呂はいいなあ。疲れが飛んでいく気がする)
 
 体をしっかり温めてから上がると、バスローブを着て髪を乾かす。

 「美桜様、着替えのドレスをこちらに掛けておきますね」
 「ありがとう、クレア。わあ、綺麗なドレスね」
 
 深紅のベルベットのそのドレスは、デコルテのラインも美しく、形はシンプルながら洗練された雰囲気だ。

 クレアはドレスに合うようにと、美桜の髪をアップに巻いて整えてくれた。

 「とってもお似合いですわ」
 「ふふ、ありがとう」
 
 鏡に映るドレス姿の美桜は、昨日とはまた違う雰囲気で大人びていた。

 「さあ美桜様、そろそろ朝食の準備をしますわね。お隣の広間でお待ちください」
 
 そう言って出て行こうとするクレアを、美桜が呼び止める。

 「アレンは?朝食どうするの?」
 「そうですわねえ。いつものように、少しでも食べられそうなものがないか聞いてみますわ」

 美桜は少し考えてから、もう一度クレアを呼び止めた。
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