桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「それにしても、本当にのどかね」
 
 スピードを出していても、風景があまり変わらないせいか、とてもゆっくり走っているように感じる。

 「あ、でも見て。だんだんおうちとかお店が見えてきたよ」
 
 美桜が指差す方に、可愛らしい街並みが見えてきた。

 「この辺りが一応町の中心部って感じかな」
 
 仁が車を広いスペースに停め、三人はそこから歩いて回ることにした。

 「いいところね。なんだか絵本に出てきそう」
 「確かに。三角屋根のおうちとか、小さなお花屋さんとか、ほのぼのしてるね」
 
 ぽつんぽつんと店もあり、美桜と絵梨は、可愛い雑貨屋に入った。

 「見てこれ!ケーキやマカロンの形のキャンドル」
 「うわー、ほんとだ。良く出来てる。色もカラフルだし、いい香りもするよ」
 「私、これ買おう」
 「私も。全部欲しくなっちゃうね。あ、このポーチも可愛い!」
 
 女の子の買い物はとにかく時間がかかる。

 仁はそんなことは承知の上とばかりに、気長に待っていた。

 楽しそうな二人の笑顔を見ていると、待ち時間も苦にはならなかった。
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